子どもオンブズ・コラム平成28年3月号 子どもから教えてもらったこと 退任のご挨拶
ページ番号1001689 更新日 平成31年1月24日 印刷
子どもから教えてもらったこと
「なぁーんだ、そういうことだったのか」と子どものことが見え始めるのは、子どもを理解できるようになったからだと、一般的には考えられています。でもそれは少し違うような気がします。子どものことが見え始めるのは、私が一方的に子どものことを理解できるようになったからではなく、子どもが、自分自身のことを私にいろいろと教えてくれるようになったからではないでしょうか。言い換えれば、子どもから見て私が、自分自身のことを教えても大丈夫な人と思えるようになったからに違いありません。だから、オンブズパーソンは、子どもから見て自分自身のことを教えても大丈夫であると「安心できる人」でなければならないと思うようになりました。
では、子どもから見て「安心できる人」とはどのような人なのでしょう。何でもできるスーパーマンみたいな人が「安心できる人」なのでしょうか。子どものことは子どもに聞くのが一番ですが、とりあえずここでは、「私なら」と考えてみることにしました。確かにスーパーマンは頼りになりそうですが、何でも1人で完璧にできる人の傍にいると、私はどこか落ち着かなくなり、安心できなくなるかもしれません。私も常に頑張っていなければならないような気がするからです。このように考えると、子どもから見て「安心できる人」というのは、案外、「あぁでもない、こぅでもない」と悩み、「ごめん、この間の面談で聞くの忘れてたんだけど、教えてくれる?」、「困ったなぁ、私には、どうしていったらいいのかよくわからないのだけれど、一緒に考えてくれる?」というように、困ったときには子どもに素直に「助けて」と言える人であるのかもしれません。
オンブズパーソンに就任してからまる4年が経ち、私は、今年3月で退任することになりました。「あぁでもない、こぅでもない」と悩み、子どもだけでなく周りの人にも「助けて」と言い続ける4年間であったように思います。ただただ悩み、助けを求めているだけで、子どもから見て「安心できる人」であったと言えるのかどうか自信はありません。しかし私自身は、出会った子どもからいろいろなことを教えてもらうことができたと思っています。
特定のある人との関係で悩むのは、その人と関わりたいと思う気もちがあるからであり、前向きな気もちがあるからこそ悩みが生じる。また、特定のある人との関係は、その人との関係に直接的な変化がなくても、他の人との出会いによって、結果として変わっていくことがある、等々。出会った子どもから教えてもらったことのすべてを書く紙幅はありませんが、このように大切なことをたくさん教えてもらいました。出会った子どもには感謝の気もちでいっぱいです。
また、オンブズには、「このような過酷な状況の中で、よく生き長らえてきたね。生きていてくれてありがとう」と言いたくなるような子どもがつながってくれたこともありました。その子と話さずとも、ただその子が生きてくれているだけで、私は、子どもから生命のちからを教えてもらえたように思いました。
分子生物学者の村上和雄さんによると、生物学的な父と母の染色体組合せパターンは70兆通り。私たちは誰もが、その70兆のパターンの中から生まれてきた、たった1つのかけがえのない生命であるそうです。生命のちからとは、きっとこの「かけがえのなさ」なのでしょう。あなたを別の誰かにおきかえることは不可能であるということ、至極、あたり前のことですが、今一度、そのような自分の生命のちからに気づけるといいなと思います。
いま、友だちとの関係で悩んでいるあなた、親や先生との関係で悩んでいるあなた、オンブズには、あなたのかけがえのない生命を大切にしたいと願い、あなたが「こうしたい」と望むことを一生懸命に支えようとするスタッフがいます。みんな決してスーパーマンではないけれど、きっと「あぁでもない、こぅでもない」とあなたと一緒に悩んでくれると思います。
川西市が、子どもが安心して暮らせるまちであることを願い、オンブズパーソン退任のご挨拶とさせていただきます。長い間、お世話になりありがとうございました。
執筆:オンブズパーソン・井上寿美(いのうえひさみ)
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