子ども・オンブズコラム平成25年8月15日号

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ページ番号1001717  更新日 平成30年3月8日 印刷 

「誰だって完全な人間じゃないよ。 幸福とは、自分の限界を知って、それを愛することだ。」

勝井オンブズパーソンのイラスト
似顔絵:勝井オンブズパーソン

「誰だって完全な人間じゃないよ。
幸福とは、自分の限界を知って、それを愛することだ。」

 これは、ロマン・ロラン作「ジャン・クリストフ」の中の一節です。高校生の夏休みに読書感想文の宿題が出て、この本は課題図書の一つでした。そして、当時、クラスで、毎日、一人ずつ、自分の心に残った言葉を廊下の黒板に書くことになっており、私はこの一節を黒板に書いたのでした。
 ただ、高校生の私は、なぜこの一節が心にひっかかったのか、よくわかりませんでした。自分が不完全なことなんて十分わかっている、自分の限界なんて考えたくないし知りたくない、限界を知ることが幸せにつながるなんて思えないし、ましてや限界を愛することなんてとてもできそうにない。そんな気持ちだったように思います。前回のコラムでご紹介した、茨木のり子さんの「汲む -Y・Yに- 」も、中学生の私には、意味は十分理解できないけれどもなぜか心にひっかかって、温め続けた詩でした。
 その後、私は、大学に進学し、社会人となり、結婚して子どもに恵まれ、嬉しいことや楽しいこと、悲しいことや辛いこと、色々な経験をしました。
 そして、今、改めてこの一節を読み返してみて、こんなふうに感じます。私には、いいところもあるけれど、不十分なところもたくさんある。そういうものの全てで私は構成されている。それで当たり前だし、そんな、ありのままの私でいていい。「自分の限界」とは、ありのままの私のことで、それを自分が認めて受け入れ、大切にしてあげることが、私の幸せにつながる。「限界」とは、一見すると欠点に見える部分。でも、私に「限界」があり、それを受け入れ愛することができるからこそ、同じような「限界」を持つ他のひとを、受け入れ、愛することができる。そういう意味で、ひとが、皆、不完全であることは、むしろ、好ましく、愛すべきことなのではないか。
 この、今の私のとらえ方が正しいのかどうかはわかりませんが、様々な経験を経たことにより、高校生の頃よりも一歩深まった考え方ができるようになったと思います。
 ひとは、年を重ね、成長していく、その時々で、少しずつ理解・実感できることが増えていきます。言われた当時はよくわからなくても、後になって、ふとした瞬間に「ああ、あの時の言葉は、こういうことだったのか!」と理解できることがあるなあと思うのです。
 みなさんも、読んだ本の中の一節や、ふと耳にした言葉、先生や親御さんから言われた言葉で、なぜか心にひっかかるというものがあると思います。その一節や、言葉を、書き留め、温めてみませんか。みなさんが色々な経験を重ねた後、その言葉がなぜ心にひっかかったのか、その言葉のもつ深い意味が、ふっと理解できる時がくるかもしれませんよ。

執筆:オンブズパーソン・勝井映子


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