子どもオンブズ・コラム平成28年11月号 自分の手で料理すること

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ページ番号1001681  更新日 平成30年9月5日 印刷 

自分の手で料理すること

平野相談員の似顔絵
似顔絵:平野相談員

 先日、ある集まりで小学生の子どもたちと一緒にカレー作りをしました。カレーといっても、市販のカレールーを使うものではなく、スパイスを何種類も使った本格的なインドカレーです。スパイスを使うことでどうやってカレーができるのか、私自身が初めての体験に興味津々でした。
 子どもたちも、もちろん、本格的なスパイスカレーがどんなものか、よくわかっていません。当日は、インドカレーのレストランをやっている人がインストラクターを引き受けてくださって、お店からたくさんのスパイスを持ってきてくれました。最初に、それぞれのスパイスの役割を教えてもらい、スパイスのにおいをかがせてもらいます。子どもたちは、おそるおそるにおいをかいでみては、「カレーのにおい!」、「これはちょっとショウガのにおい!」、「こっちはシナモン!」などと確認して、それから調理にとりかかりました。
 材料はいたってシンプルで、鶏肉と玉ねぎ、トマトにニンニク、ショウガだけです。まず、鶏肉以外の材料をみじん切りにして、次に鶏肉を一口大に切ります。子どもたちはあまり家で料理をしたことがないようで、包丁を持つ手が危なっかしいのですが、「へー、みじん切りってこうやってするんやー」、「あー、こうやったら切りやすいでー」と、いろいろ発見があって楽しそうです。玉ねぎを切るときには、目にしみて、涙、涙で、「前が見えないー」、「目がー!!」と大騒ぎ。水道の水で目を洗いだす子どももいます。それでも慣れてくると、玉ねぎを見ないようにして切る工夫をあみだす子どももいました。
 参加していた子どもたちのなかにひとり、ちょっと元気のない男の子がいました。あらかじめ聞いていたお母さんの話では、最近、学校があまり楽しくないようです。学校に行くのが何だかおっくうになってきて、それでも行かなきゃと思っているうちに、少しずつしんどくなって、何かにチャレンジする元気が出てこないのだそうです。その彼は初めのうち、にぎやかなカレー作りの様子をどこか不安気に眺めているだけで、率先して作っている子どもたちの横で、「どうしようかなー」と戸惑っていました。そんな彼に、インストラクターの人は、「じゃあ、あなたはトマト切って。まず、これぐらいにして、後はザクザクっとこんな感じね」と、突然声をかけたのです。いきなりふられた彼はちょっと驚いて、緊張した様子でしたが、「うん」とトマトを切りだしました。そして、トマトを切りながら、だんだん楽しくなってきたようで、表情がみるみるうちに活き活きしてきました。インストラクターの方も「そうそう。いい調子。そんな感じね」と言ってくれて、彼はますます活き活きと切っていました。トマトを全部切り終わった彼は、「これはどう切る?」と聞いて、自分からニンニクやショウガも切りはじめ、最後には大きな鶏肉も切ろうとします。でも、上から押し切ろうとしても、ちっとも切れません。それで、ちょっと引いて切ればいいよと教えられ、うまく切れるようになって、鶏肉もたくさん切りました。
 いろんなスパイスで具材を炒め、ぐつぐつ煮込んで、カレーが完成しました。私は、スパイスカレーをとても楽しみにしていたのですが、実のところ、食べ慣れないスパイスカレーを子どもたちが食べてくれるだろうかと、ちょっと心配していました。ところが、その私の予想は見事に裏切られ、みんな食べる食べる。「おかわり」「おかわり」で鍋いっぱいのカレーも完食です。やっぱり、自分で作ったということが何よりのスパイスになったようです。
 料理をして食べるというのは、ほんらい、日常の些細な、ごくありふれたことであるはずですが、今は、調理しなくても簡単に食べられるインスタント食品であふれていて、子どもたちが自分で料理する機会はあまりないようです。でも、料理をするというのは、生活のいちばん身近にあって、それでいてとてもリアルな手ごたえがある活動です。自分の手で材料を切って、混ぜて、煮込んでと、どの作業にも確かな手ごたえがあり、そして完成した達成感があり、食べておいしくて、おなかもいっぱいになる。すごく単純なようでいて、実はとても大切なことで、これこそが人間の本来なのかもしれません。

執筆:相談員:平野裕子(ひらりん)

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