子どもオンブズ・コラム令和2年2月号 自治体シンポ2019に参加して

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ページ番号1010071  更新日 令和2年2月17日 印刷 

「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2019」に参加して

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今井相談員のイラスト

 2019年の「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム」が、2020年1月26日(日曜日)に東京都立川市で開催されました。当初は、2019年10月に2日間にかけて予定されていましたが、台風の影響のため中止となり、今回、規模を縮小する形で行われました。
 自治体シンポジウムは、全国の自治体関係者や研究者、NPOなどが集まって、子ども施策のあり方やまち・コミュニティづくりの取り組みについて、情報共有や意見交換、ネットワークづくりを行うことを目的に毎年開催されています。第1回目の2002年は川西市で開催され、今年度で18回目を迎えます。川西市子どもの人権オンブズパーソンでは、この自治体シンポジウムを貴重な研修の機会として毎年参加しています。今年は、三木憲明オンブズパーソンと相談員の今井が参加しました。
 シンポジウムに先立って、前日の1月25日(土曜日)に、「子どもの相談・救済に関する関係者会議」が行われました。全国の自治体から子どもの相談・救済に関わる実務者(オンブズパーソン・相談員・事務局担当者など)や今後同じような制度をつくろうとしている自治体の関係者が集まり、それぞれの活動を報告し合い、課題などを検討します。こうした話し合いを通じて、制度についての理解を深め、実践の質を高めることが会議のねらいです。今年は「子どもからのアクセスの確保」をテーマに基調報告を聞いた後、困っている子どもとつながるための相談方法や広報のあり方、また、アウトリーチの実践などについて、グループディスカッションを行いました。班の話し合いで、他の自治体も、広報・啓発上の課題を抱えながらさまざまに工夫をされていることがわかりました。また、どのようなアクセスの仕方であれ、子どもに直接会って話を聞くことが大事だという意見も出て、川西オンブズの実践で日々大事にしていることを再確認しました。
 シンポジウムは、「子ども・若者支援とまちづくりーとぎれず、すきまをつくらず、そして重なり合うー」を全体テーマに、7つの分科会に分かれていて、三木オンブズは「子どもの相談・救済」に、私は「子どもの居場所」に参加しました。三木オンブズが参加した分科会では、各自治体から取り組みの現状や課題などが報告され、子どもの相談・救済機関の役割や責務について議論が深まったとのことです。
 私が参加した分科会は「子どもの居場所の公共性と市場化問題」がテーマでした。近年、子どもの貧困が社会的に注目を集め、生活困窮家庭の子どもへの学習支援や子ども食堂に対して、行政からの助成や委託も進んでいるといわれます。これまでは居場所を重視するNPOや市民団体、社会福祉法人などが委託先として多かったのですが、最近は学習成果・進学実績をアピールする学習事業会社に委託先が変更になったりすることもあるようです。このような「市場化」が進むなかで出てきている課題を検討し、あらためて子どもの居場所について考えようというのがこの分科会の趣旨でした。
 基調講演では、長年不登校の子どもの居場所づくりやフリースクールの運営に取り組んでおられる川崎市子ども夢パークの西野博之さんが話されました。西野さんは、「子どもの居場所づくりと市場化の中で私たちが忘れてはいけないことは、単なる勉強の場、単なる食事提供の場ではないということ。この場で子どもたちがしていることは、くらしを取り戻すこと、つながりをつくること」だと話され、「場づくりでは、子どもたちの背景に思いを巡らし、福祉的課題に気づくことや子どもの最善の利益を考える視点が大事」だとまとめられました。その後、学習支援や子ども食堂を行っている4つのNPOなどの団体からそれぞれ報告があり、フロアを交えて議論が行われました。
 議論の中で挙げられていた、居場所づくりをする上での大きな課題の一つが「評価」です。行政からの委託や助成を受けた場合に、事業を評価しなければなりません。しかし、学習支援など、子どもの育ちにかかわる事業の評価はとても難しいということです。たとえば、学力があがった、試験で点数がとれた、進学できたなどがその指標になると、評価が数値化され、結果子どもを追い込むことになります。他方、個人の力だけではどうすることもできない制度的なことや福祉的課題の問題解決はそもそも容易なことではありません。むしろ、居場所を求めてやっている子どもたちに必要なのは、ありのままの自分が肯定され、安心できることや、信頼できる他者やモデルとなる人と出会うことなどです。そうした居場所づくりのなかで大切にされていることは、数値化はもちろん、その成果を形にすることは簡単ではありません。
 どの団体の方も話されていたのが、居場所の「質」を問うことが大事だということでした。たとえば、不登校や引きこもり支援に取り組んでおられる一般社団法人ぎふ学習支援ネットワークの南出吉祥さんは、「可能性の増大」ということばで説明されました。評価を個人の変化から見るのではなく、その子のいる場がどのように変化したか、その地域がどのように変化していったかという点から、その子の可能性がどれだけ増えたかを評価するというのです。「“Aさんが話せるようになった(Aさんが就職したなど)”ことを評価すると、“話せる(就職する)のがよくて、話せない(就職できない)のがダメ”と評価軸ができてしまう。なので、“話せるような関係ができた” “雑談が飛び交うような場になった”ことを評価する」というのです。議論はさらに発展し、参加した人数が評価になることが多いけれど、その場に行ってなくても「あるから安心」という、そうした地域づくりまでを視野にいれることが大事なのではないか、と話は進んでいきました。
 今回お話を聞いた団体とオンブズの活動とは立場や方法は違いますが、大事にしていることは同じだと思い、とても元気づけられると同時に、活動の参考になりました。オンブズの実践を通じて、「川西にオンブズがあるから安心」と子どもたちが思える地域づくりにつながるといいなと、あらためて思いました。
 全国の子ども支援に関わる方々にお会いし、それぞれの取り組みのお話を聞くことで、新しい気づきや振り返りの視点をたくさん得る機会となりました。この経験を今後の活動に活かしていきたいと思います。

執筆:相談員・今井貴代子(きよぽん)

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