子どもオンブズ・コラム 令和8年1月号 体験からの気づき
ページ番号1023666 更新日 令和8年1月6日 印刷
体験からの気づき
暑さも和らいだ10月末に法事があり、こじんまりと親戚が集まりました。その際、お坊さんが読経の後、法話のかわりにと作文を読まれました。その内容を要約して紹介します。
中学3年生のA君とB君は小学校の時からの仲良しで、先生の薦めもあり、同じ進学校の高校を受験することになりました。A君はB君よりも成績が良く、合格できるという気持ちで受験に挑戦しましたが、結果はなんとA君は不合格、自分よりも成績の低いB君が合格していました。A君はこの結果にショックを受け、学校を何日も休みます。ある日、お母さんがA君の部屋に来て「B君が心配して来てくれているから部屋に案内するよ」と言います。A君は、どうせ自分だけが合格したことを自慢しに来たに違いないと思い「今、顔を合わせる気にならないので断って」と言いますが、お母さんはB君を部屋に案内します。部屋に来たB君は「ごめんね。成績の低い僕だけ合格してしまって」とだけ言って立ち去っていきました。A君は、そんなことを言われるとは思ってもみなかったのでびっくりしました。そしてB君に対する自分の思いにハッと気づきます。B君は自分のことをバカにすると思っていたのに、僕のことを心配して勇気を出して会いに来てくれた。逆に僕は自分のことしか考えていなかった。もし自分だけが合格していたら、傲慢な気持ちのままB君を見下し続けていただろう。今回、受験はうまくいかなかったけれど、別の大切なことに気がついたという内容です。
お坊さんは「様々な体験は物事の道理を理解し、自分の善悪をわきまえる心や洞察力が養えるので大事です」と付け加えられました。確かに教科書やインターネットから得られる知識は物事を理解したり、整理したりするには必要ですが、体験して痛かった思いや、苦しかった記憶、周囲から応援してもらった嬉しさは何十年経っても忘れません。
私の思い出深い体験としては、小学校の耐寒遠足があります。冬の妙見山に歩いて登るというもので、凍っていたり、一面泥水の山道を登り降りしながら山頂を目指します。滑って怪我をしたらどうしようという恐怖と、手足の擦り傷がヒリヒリ痛み、辛くていやだ、やめたいと半泣き状態でしたが、何とか山頂に着いた時、先にゴールしたクラスメイトや先生達が拍手で迎えてくれました。山頂で先生が炊き出してくれた温かい飲み物をみんなで飲み、心も体も温まったことを今でも覚えています。この体験からは、辛くても達成した時の喜びと、みんなで挑戦したからこそ達成できたのだということ、そして、見守ってくれている人達が周りにいることを知りました。
このような子どもの時代の体験は、楽しかったことだけでなく、面倒だなとか自信がないなと思うことも沢山あり、結果的にやめとけばよかったと後悔することもありました。しかし、おとなになって過去の経験を振り返り、今の自分と照らし合わせてみると、良かったことも悪かったことも、全ての体験は生かされています。それは、例えば生活習慣として身についていたり、困った時に相談できる友達や仲間と出会うきっかけになったり、事前準備の必要性や危険回避の知識を得たことなどに繋がっていて、体験によって多くの気づきを得ることが出来ました。そして、この気づきが次の体験に生かされ、より良く生活するための知恵になっています。
最近は子どもが体験する前に、親が先回りして子どもの進む道にブラシをかけ、障害物を取り除き、スムーズな道を作っていく「カーリングペアレント」という言葉もあるようです。でも、私は子どもがやってみたいと思うことがあれば、多少の失敗や苦労が伴うことでも可能な限り挑戦する機会を作り、子ども自身が自分で考え、挑戦するのを見守り、その結果をきいていくことも、子どもの育ちにおいて、大切な1つの要素だと思っています。
執筆 相談員 田中 智子
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