子どもオンブズ・コラム平成29年6月号 「障害の社会モデル」から

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ページ番号1001676  更新日 平成30年3月8日 印刷 

「障害の社会モデル」から

堀家コラムイラスト

 このイラストを見て、みなさんはどのようなことを感じますか?「この人、大変そうだなぁ」「誰か助けを呼んだほうがいいかしら」「声をかけたほうがいいかな」等、さまざまなことが思い浮かぶのではないでしょうか。
 こうしたシーンは、実際に街中で目にすることもありますが、こうした場面において上で書いたような考えを抱くことを「障害の個人モデル」で考えている、と言います。つまり、問題が起こっている理由やその解決方法をその人個人に求める考え方です。
 近ごろ、障害のある人の生活をめぐっては、この個人モデルではなく、「社会モデル」で考えましょう、という見方の変化が起こってきています。社会モデルをひとことで言うならば、「障害のある人の生きづらさは、世の中が作っている」ということです。

 障害のある人の生きづらさは世の中が作っている?そんなことあるのでしょうか。わたしは障害のある人をいじめたりしていませんし、差別もしていません。そもそも、障害のある人とのかかわりがありません。そんなふうに考える人のほうが多いのではないでしょうか。しかし、いま一度このモデルにもとづいて、みなさんの生活を見直してみてください。わたしたちが快適だと思っているすぐ隣で、不自由さを抱えている人がいるかもしれないし、あるいは、そうした「わたしたちの快適さ」のために、誰かの不自由さが生まれてしまっているかもしれません。

 先のイラストに戻りましょう。車いすに乗った人が、階段の前にいます。ここを駅だとしましょう。電車を降り、階段の向こうに行きたいけれど、行けないようです。その時に、「社会モデル」を使うと、ここでの問題はこのように考え直すことができます。

 (この駅は、階段での移動が可能な人にしか利用できないようになっている。そのような駅を作った電鉄会社に問題があるし、またそうした駅のありかたを認めている国や自治体にも問題があるのではないか。)

 さらに、この解釈に私なりの味付けを加えるならば、そのような駅の問題性に気がついたり批判することなく、「何事もなかったかのように」日々利用しているわたしたち「階段利用者」にも、何らかの問題性を感じてほしいなと思います。もちろん、何もかも「ひとのせい」にして生きろ、というのではありません。障害のある人もない人も、自分の人生を思うように生きることが大切で、その時に自身が努力を重ねたり、時に壁にぶつかることも必要でしょう。ただし、障害のある人については、これまであまりにもその個人に問題の解決が求められすぎており、結果的に社会の中でアンフェアな状態に置かれ続けてきたことに、わたしたちは気が付くべきでしょう。そうした気づきをたくさん見つけるための手がかりとなるのが、この「社会モデル」の考え方ではないでしょうか。

 ところで、オンブズには日々、子どもたちのさまざまな生きづらさが持ち込まれてきます。問題解決のために多くの時間をかけて協議がなされますが、その際、わたしはこの「障害の社会モデル」のことを頭に浮かべながら、議論に参加するようにしています。いじめ、不登校、進路問題…一見すると個人で解決しなければならないことのようですが、そこには、そうした問題に直面した子どもたちがそのような状況に置かれなければならなかった「世の中」の側の問題が必ずあります。つまり、この「社会モデル」の考え方は、障害のある人だけにとどまらず、すべての人にあてはめて用いることができるのです。

 もしみなさんが、いまちょっとした「生きづらさ」を抱えていたとしたら、まずはこの「社会モデル」で考えてみられてはいかがでしょうか。ひょっとしたら、自分(や誰か特定の個人)ばかりを責めるのではない、別の解決方法が見つかるかもしれません。

(注)「障害」の表記については様々あり、最近では、人に直接かかる場合には「障がい」、社会的障壁としての意味合いを強調する場合に「障碍」、を使うことが多いようです。しかしながら、このコラムにおいては、社会が害を生み出しそれが当事者を苦しめている、それこそが障害者と呼ばれる人が抱える“障害”なのだという意味を込め、「障害」という表記に統一しています。こうした障害の概念については星加良司著『障害とは何か』(2007年 生活書院)などを参照してください。

執筆:オンブズパーソン・堀家由妃代(ほりけゆきよ)


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