子ども・オンブズコラム平成26年1月20日号

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ページ番号1001713  更新日 平成30年3月8日 印刷 

子どものあなた、そしておとなのあなたに伝えたい

村上相談員の似顔絵
似顔絵:相談員・村上裕子

 古今東西、人と人が交われば、その喜び・嬉しさと同時に、時にはすれ違いや傷つきも起こるもの。相手が大切な存在であればあるほど、それは深刻で、無力感にさいなまれることも少なくない。それは、親子関係でも、また生徒-教師関係でも、友達関係や、もちろん恋人、夫婦関係でも同じだろう。
 私は、縁あってオンブズの相談員として、子どもから、またその周りのおとなから、様々な困りごとや悩みごとを聞き、一緒に考えたり、また子どもが主体的に問題解決に取り組む過程で、その一端を担わせていただいてきた。その中で、子どもから周りに対する数え切れないほどの思いや心配を聞いた。子どもの周りにいるおとな、特に親の思いや心配も同じである。
 子どもの思いと、その周りのおとなの思いは時として微妙にずれる。子どもが、親の力の及ばないところで、ひどく傷つく経験やしんどい思いを抱える出来事に遭遇すると、親としても自分の無力さを痛感し、なんとか子どもを守ろうと必死になる。それはいたって自然なことでもあるのだけれど、傷つきしんどい思いをしている、その子どもが自分のしんどさを安心して語る機会がもてた時、初めて自分にとっての問題解決のイメージを模索し始める。そうなると子どもは本当に強い。傷つく原因となった関係の修復を考える子どもも少なくない。側にいて一緒に考え、支える存在がある時の子どもの健康さは計りしれない。

 Aさんは学校でのトラブルから、学校に行き辛くなり、子どもを心配する親と学校の関係も微妙にずれてギクシャクした中で、よりいっそう学校に行きにくくなっていた。学校から学校復帰に向けての提案がなされたが、親の心配をはねのけてその提案に乗れるほど建設的なイメージをAさん自身持てず、ゆれていた。ある時、そのAさんが、本当はやってみたいなって思う気持ちをポロッともらした。その思いを受けて、私たちは、学校にAさんの気持ちを伝えたり、学校の思いを聞いてAさんに伝える「関係調整」を提案した。Aさんからその意向を受けて、次はAさんの親にオンブズが学校とAさん親子の間をやり取りすることについて説明し、理解を得る。
 関係不全に陥っていたAさん親子と学校だったが、オンブズという第三者が間に入りやり取りする中で、少しずつお互いの思いを受け止めるようになっていった。子どもの声が中心におかれることで、こじれた糸が緩やかにほどけ始めた。
 だけど、そううまくいかないケースもある。学校内で休み時間中のBさんに対するいじめが発覚し、心配を募らせたBさんの親と学校で考えた対策の一環として、休み時間の見守りが行われていた。しかし、その状態が反対にBさんを周りから浮く存在にしていると、ちょっぴり困った感を示していたBさん。本当はもっと間接的に見守ってほしいと思っていたが、中々その気持ちを親や先生には伝えられない。親の心配する気持ちは痛いほど分かるし、自分だって、「もう全然大丈夫!」と言い切れるだけの自信はない。Bさんにとって、どういうかたちが一番安心して学校で過ごせるのか、一緒に模索し学校や親に伝えてみようという提案をしていた矢先、Bさん親子との連絡は途絶えてしまった。未だに心残りなケース。
 一度傷つき、関係がこじれると、中々その関係を修復するという前向きなイメージは沸きにくい。しかし、関係修復とまでいかなくても、自分がどういう気持ちだったか、どうなったらいいなと思っているかというのを周りのおとなに伝え、その気持ちを受け止められたり、考慮される経験をもった子どもの回復力はすごい。
 言ったって変わらない、余計自分が意地悪されたり、ややこしいことになりそうと心配していたCさんと、関係機関の職員にCさんが困っていたことについて伝え、聞いてもらう場面に同席した。丁寧に温かくCさんの思いを聞いてくださった職員の方とのやり取りの後、徐々に力を取り戻したCさんは、長期に渡って家から出にくくなっていた状態から、もう一度外の世界で色んな人とやり取りしてみようと一歩足を踏み出した。

 子どものあなたに伝えたいこと、周りのおとながあなたのことを心配して守ってくれようとしているのをひしひしと感じているあなた、それは大きな支えだけれど、もし少しその思いがずれているなら、あなたにとって一番いいことは何かをそのおとなに伝えてほしい。心配かけたくないし、言いにくいよって思うかもしれないけれど、そのおとなもあなたが元気になることが一番の望みだから、そしてあなたの人生なのだから、うまく伝えられなくても大丈夫だから、あなたの思いを、伝えられそうな人に伝えてみてほしい。もちろん全部言う必要はないっていうのもあるよ。たとえそのおとながあなたのことを心配し大切に思っている親だったとしても、思いが微妙にずれるのは当然のこと。
 おとなのあなたに伝えたいこと、自分の大切な子どもが、手の届かないところで傷つく経験をして、どれほどのご心痛かとお察しします。その辛かった気持ちを安心して話せるあなたの存在は子どもにとって大きな支えだったでしょう。問題を解決するにあたって、子どもの声に耳を傾けてみてください。もしかしたら時間がかかるかもしれないし、もしかしたら親に心配をかけたくないと思って話しづらいこともあるかもしれません。そんな時は、少し斜めの関係で話を聞いてくれそうな存在にその役目を託してみたり、それとも今はそっとしておいてほしいのだったら、少し気長に待ってみてください。その子どもなりの問題解決のイメージが、一緒に話を聞いたりやり取りする中で見えてくることと思います。そして、もちろんぜひオンブズに相談してもらえたら嬉しいです。
 相談員という立場で思うことは、「やっぱり子どもに聞いてみないと分からない」ということ。それを自分自身にしっかりと言い聞かせながら、今後もオンブズの仕事に携わっていきたいと思う年明けです。

執筆:相談員・村上裕子


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