子どもオンブズ・コラム平成31年3月 退任のあいさつ

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ページ番号1008510  更新日 平成31年3月22日 印刷 

退任のあいさつ

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      吉川オンブズのイラスト

 この3月で、4年間務めましたオンブズパーソンを退任することになりました。この4年の間、多くの子どもたちのケースに接し、歩むペースはさまざまですが、子どもたちが自分の力で歩んでいく姿を目の当たりにすることができ、たくさんの勇気をもらいました。また、親御さん、先生方、行政の方々との話し合いや協議の場においても、皆さんが模索しながらも解決に向けて知恵を出し合い、真摯に子どもたちに向き合おうとしている姿勢に接することができました。

 オンブズパーソンに就任した当初は、教育や心理の専門家でもない弁護士の私に一体何ができるのかを探りながらの活動になるであろうと予想し、悪戦苦闘の日々になるのではと考えていました。しかし、直にそれは杞憂に終わりました。
 なぜなら、川西市のオンブズパーソン制度は、決して個々のメンバーが個別にケースに当たるのではなく、メンバー全員がチームとしてケースに向き合い、議論し、そして実践していく組織であるからです。逆に、そのことは、当然、意見の違いが生じるということを意味します。しかし、メンバーが常に意識していることは子どもの最善の利益ですから、一定の議論を経た上で、最後は大きな方向性は一致をみます。この意味で、意見の不一致というよりは、多角的な意見が出るといった方が正確かもしれません。
 個人的な感想で恐縮ですが、私はこうした議論の場に身をおくことができたことをとても幸福であったと心から思っています。

 それと、この4年間の最後の年にオンブズパーソン制度が20周年を迎えるという経験をさせていただきました。2018年次のオンブズレポートに20年間の相談内容の推移がまとめられていますが、決して同じような割合で推移してきたわけではなく、変化が見られます。また、2018年8月に行われましたオンブズの夏季研修には発足時からの歴代オンブズパーソンに集まっていただき、座談会を催すことができました。その時の模様も2018年次のオンブズレポートに掲載されていますが、それぞれの時代においてどのような思いで関わってきたのかに触れることができ、20年の重みを感じました。
 その座談会でも語られていますが、相談内容に変化がみられたとしても、オンブズパーソンの役割は個別救済とそこから見えてきた制度的な問題についてしっかりと制度改善に向けた見解を表明していくということです。この二つの役割を担ってきた川西市のオンブズパーソン制度は、全国に誇れるものであると思っています。

 この4月からオンブズパーソン制度は21年目に入りますが、川西市の全ての子どもが輝けるそんな川西市であってほしいと心から願います。

執筆:代表オンブズパーソン・吉川法生(きっかわのりお)

退職のあいさつー子どもが権利を語るとき

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      鈴木相談員のイラスト

 この春で、子どもの人権オンブズパーソンの相談員を退職することとなりました。2017年からの2年間、短いようで長く、長いようで短い、貴重な時間を過ごさせていただきました。いま現に困っている子どもに向き合う日々の中で、オンブズチームのメンバーに支えながら、子どもの気持ちに寄り添うとはどういうことか、子どもによる問題解決をいかにサポートするのか、そもそも子どもの人権をどのように考えていったらよいのか、様々なことについて学び、考える月日でした。
 先日、『みどりの学園』という戦後間もない頃のフランス映画を見る機会に恵まれました。主人公のアルベールは、小学校の卒業試験を三度落第して学校の勉強にはまったく身が入りません。それどころか、暗記ばかりが求められる授業に反発して、クラスにも入らず、教室の外から教師に野次を飛ばすのが日課です。そんな彼が、新しく学校に赴任したパスカル先生の自由な教育の息吹にふれて、少しずつクラスの仲間とともに生活に根ざした学びを深めていく物語です。
 この物語の終盤、アルベールは4度目の卒業試験を迎えます。この試験は、筆記試験ではなく、試験官の質問に答える、いわゆる口頭試問です。アルベールは序盤、算数の計算や理科の実験にかかわる質問に順調に答えを出していきますが、終盤のフランスの歴史につまずきます。「ルイ14世は何年に生まれたのか」、「1789年は何の年か」といった問題にまったく答えられません。試験官は、彼を呆れた顔で笑います。しかし、アルベールは、その後のやりとりのなかで、試験官が求める年号は言えなくても、人間にとって大事な権利については話せると言い、人権宣言とは何か、人間が生まれながらにひとしくもっている権利について自分の言葉で語るのでした。それは、教科書による知識ではなく、パスカル先生との出会いの中で、ときに反発しながら、アルベールが学んだものでした。
 川西市の子どもの人権オンブズパーソン条例の第1条では、条例の目的を記すにあたって「すべての子どもが人間として尊ばれる社会を実現することが子どもに対するおとなの責務であるとの自覚にたち、かつ、次代を担う子どもの人権の尊重は社会の発展に不可欠な要件であることを深く認識」すると書かれています。これは、オンブズパーソン条例に限らず、社会にとっての普遍的なメッセージとして力をもっているように思われます。私自身、はたして子どもに対するおとなの責務をいくらかでも果たせているのか、先の映画にひきつけるならば、アルベールが自分の言葉として語ったように、子どもにとって権利が本当に身近なものになっているのか、一人のおとなとして、今後も考えていかないといけない課題だと受け止めています。

 最後になりますが、オンブズパーソンの職務をとおして出会った子ども一人ひとり、この仕事を通じて関わりをもつことができたすべての方に心からの感謝を申しあげます。

執筆:相談員・鈴木伸尚(すーくん)

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