子どもオンブズ・コラム令和元年10月号 ふだん見えている景色を変える

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ページ番号1009607  更新日 令和1年10月30日 印刷 

ふだん見えている景色を変える

イラスト
   今井相談員のイラスト

 最近、わたしは、髪にパーマをかけました。すこし髪を切っただけだと気づいてもらえないことが多いのですが、今回パーマをかけると、いろんな人から「髪型変わったね」と声をかけてもらいました。変化に気づいてもらえるのは、照れくさいですが、やはりうれしいです。
 思えば、中学・高校時代、髪の毛を切ることがわたしの気分転換のひとつでした。嫌なことがあったら、髪を切って忘れようとする、気合を入れるために髪を切る。ゲン担ぎではないですが、髪の毛は唯一自分で変えることのできるものだったのかもしれません。自分ひとりでは「えいやっ」と思いきれない時、髪を切ることによって気分を高める、区切りをつける。そんなことがわたしにはありました。そんな風に頻繁に髪を切るので、子どものころは髪が一度も肩についたことがなく、ずっとショートのままでした。
 子どものころのわたしは、自由に使えるお金もさほどなく、行動範囲や交友関係も限られている中で、自分なりに気分転換の方法を見つけていたように思います。髪を切る以外にも、たとえば、わたしの実家は三方を山で囲まれ、わたしの住む集落は田んぼや畑といった田園風景のなかにありました。気が乗らないとき、やることがないときは、山に登って、見渡す限りの田んぼの風景と空を眺めていました。そうすると、自分がなんだかちっぽけな存在に思えて、気分が少し晴れたように思えました。他には、わたしは本が好きだったので、学校の図書室や町の図書館に行って、お気に入りの小説を見つけて読むのが好きでした。司書のおねえさんに面白い本を紹介してもらったり、何気ない会話が心地よかったのを覚えています。図書館はわたしにとって、今でいう居場所だったように思います。
 子どもは気分転換を気づかずたくさんしているような気がします。学校に行けば、授業を受けて、休み時間には運動場に出て遊んだり、教室でおしゃべりをしたり。学校が終われば、友だちの家に遊びに行ったり、習い事をしたり、宿題をしたり、テレビを見たり、ゲームをしたり。はたまた、学校でも家でもないところで、自分が安心できる場所を見つけようとしたり…。やることが多い、と言えばそうかもしれませんが、あっという間に過ぎていく毎日の中で、いろんなことをする気分転換の達人のようです。
 おとなになった今、わたしは気分転換があまり上手ではないなぁと思うことがあります。同じことをずっとしていて、そこから抜け出すのが難しくなったり、嫌なことがあったときもひとりで抱え込んでしまっているのかもしれません。そんなときは、自分以外の誰かのちからを借りるといいのかもしれません。誰かにふだんいる場から連れ出してもらったり、一緒に出かけてみたり、話を聞いてもらったり、背中を押してもらえることがあったらいいなと思います。よくよく考えると、子どものころの気分転換も、誰かがそばにいてくれたり、自分以外の誰かや何かの力を借りてできていました。今回、変化に気づいてほしくて髪を切ったわけではないですが、誰かに気づいてもらい、声をかけてもらうことが、結果として、気分転換になったりもしました。他人のちからを借りながら、ふだん見えている景色を変えると、気分も変わり、次の一歩を踏み出せたり、「えいやっ」と思いきれたりする、そんなことがあると思うのです。
 オンブズに来てくれた子どもからは、困りごとだけでなく、いろんな話を聞かせてもらっています。オンブズに来ることで、ふだん見えてる景色が少し変わったと思ってもらえるようなかかわりを、わたし自身していけたらと思っています。

執筆:相談員・今井貴代子(きよぽん)
 

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