子どもオンブズ・コラム平成28年10月号 「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2016in宝塚に参加して

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ページ番号1001682  更新日 平成30年3月8日 印刷 

「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2016in宝塚」に参加して

自治体シンポ2016
写真:自治体シンポ報告資料集

 「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウムが、2016年10月8日(土曜日)・9日(日曜日)に兵庫県宝塚市で開催されました。
 このシンポジウムは、全国の自治体関係者や研究者、NPO関係者等が参加し、子ども施策のあり方などについて、情報・意見交換、研修、交流等を行う場です。2002年に川西市で初めて開催されて以降毎年開催されており、川西市子どもの人権オンブズパーソンも毎年参加しています。今年は、川西市からは吉川オンブズパーソン・事務局の沼さん・相談員の船越が参加しました。

 本大会の前日、10月7日(金曜日)には、子どもの相談・救済の仕組みを設けている自治体の関係者が集う、「子どもの相談・救済に関する関係者会議」が開催されました。この関係者会議では、制度構築の背景や実際の活動、課題等について各自治体が発表を行い、制度について理解を深めることを目的としています。
 川西市からは「子どもオンブズワークの実際(自己発意案件の調査)」と題し、自己発意調査(※)について報告を行いました。川西市の条例の中での自己発意調査の位置づけについて説明し、過去の自己発意案件について、事案の概要や結果も含めて報告を行いました。
 自己発意に踏み切る判断基準や、協力義務を負わない民間の機関で起きている問題に対して調査等の協力を求めることができるのかなどの質問が会場から相次ぎ、議論を深めることができました。自己発意調査を条例上しっかりと位置付けたうえで実施している自治体はまだ少ないため、オンブズワークについての理解を深め、共有する機会となりました。

(※)自己発意調査とは、相談などからオンブズパーソンが独自に入手した情報について、子どもの人権救済・擁護に関わるものであり、調査が必要だとオンブズパーソンが判断した場合に、申立てがなくても行える調査のこと。

 自治体シンポジウム1日目の全体会では「子どもの格差・貧困問題と子ども支援・子育て支援 ―子どもにやさしいまちづくりをめざして―」というテーマで、子どもの貧困の現状や要因、今後の取り組みに必要な視点などについての森田明美さん(東洋大学教授)の基調報告をもとに、2つの自治体と1つのNPOが先進的な取組みについて発表を行いました。
 東京都足立区では、さまざまな課題の根底には「貧困の連鎖」があり、これを断つためには子ども支援が重要であると考え、学校を基盤に学びの環境整備や子どもの居場所づくりなどに取り組む「教育・学び」、妊娠期から保護者支援も含めて子どもの成長に合わせた切れ目ない支援を行う「健康・生活」、手続き等で来所した場合でも困っていそうな様子が見えれば相談窓口につなぐなどの「推進体制の構築」を3本柱とし、全庁的な連携のもと、さまざまな取組みを行っています。足立区の方が「子どもの貧困」対策は「低所得者対策」とイコールではない、経済的側面のみでなく様々な困難を抱えていることを考えなくてはならないとおっしゃっており、子どもの貧困対策を考えていく上で重要な視点だと感じました。
 福岡県北九州市では、子どもの貧困対策の一環として、市が子ども食堂や学習塾を設置し、民間に運営を委託しています。子ども食堂については、市がモデル事業として取組み、ノウハウを蓄積して、民間での取り組みが今後増えるようにと考えているとのことでした。ただ、広報の仕方については、貧困対策と銘打ってしまうと抵抗を感じる人がいるので、支援が必要な人に届くようにしながらも工夫が必要だとおっしゃっておられ、参考になりました。
 インドネシア女性エンパワーメント・子ども保護省副大臣のレニー・ロザリンさんは、インドネシアにおける子どもにやさしいまちづくりの取り組みも交えながら、特別コメントを行いました。各機関が連携すること、指標を設けて取組みについての評価をしっかり行っていくことの重要性が語られました。
 もっとも心に残ったのは、「こどもの里」の活動をしている荘保共子さんのお話です。「こどもの里」の取り組みについては、最近ドキュメンタリー映画「さとにきたらええやん」が上映されていることもあり、全国的に有名になっています。「こどもの里」があるのは、大阪市西成区、日雇い労働者らが集う国内最大規模の街、釜ヶ崎。子どもたちの遊び場を確保したいという思いで、1977年、荘保さんは「子どもの広場」を作りました。そこに来る子どもたち1人1人に向き合い、SOSに応えていくなかで活動が広がり、遊び場や生活の場を兼ね備え、親子関係が煮つまった時に一時的に子どもを預けたり、子どもが避難所として泊まることができる機能も備えた、現在の「こどもの里」の形ができました。目の前の子どもに何ができるかをひたすら考え、取り組んでいくという姿勢に、非常に心を打たれました。

 2日目は8つのテーマに分かれて発表・検討を行う分科会が開催されました。吉川オンブズが参加した「子ども参加」の分科会では、子ども議会等の参加者の実際の声や、子ども議会と自治体関係者がしっかり対話を続けている取組みなどを聞くことができ、参考になったとのことです。事務局の沼さんが参加した「子どもの相談・救済」分科会では、各自治体の取り組みや、システムとしての難しさ、また広報の仕方などが発表され、議論が深まったようです。
 私が参加した「子どもの居場所」の分科会では、全体会でもお話のあった「こどもの里」の荘保さんと、川崎市子ども夢パーク所長の西野博之さんとの対談があり、それを受けて2つの自治体の発表、石巻市子どもセンターの立ち上げ・運営に関わってこられた原京子さんからの特別発言がありました。
 川崎市子ども夢パークは、ケガをしても自分の責任という「ケガと弁当、自分持ち」をモットーに、できるだけ禁止事項をなくし、異年齢の子どもたちがまざりあって自分の責任で自由に遊べる場、その中で自然にお互いを支えていくことができるような場です。遊具が欲しければ自分で作り、自分が作った遊具で誰かが楽しそうに遊んでいる姿を見る。すると子どもの自尊感情が高まっていく、と西野さんはおっしゃいました。大阪府吹田市では、異年齢の子どもたちの遊び場として、小学校の運動場や空き教室を活用する「太陽の広場」事業に取り組んでいます。この活動では子どもの自主性・創造性を育むことを大切にしています。見守るおとなたちは、決して子どもに指導をすることはありません。けれどもそのおとなの存在が、子どもの安心感に繋がっているということでした。愛知県大府市の児童センターでは、館長さんご自身が見守るおとなとしての役割を担っておられ、遊びにくる子どもたちの様子を常に気にかけ、少ない予算のなかでも子どもたちのために必要な仕組み、必要な設備などを考えておられました。宮城県石巻市子どもセンター「らいつ」は、地域と連携しながら子どもたちが企画・デザインを行い、完成後は子どもたちの居場所として、子どもたち自身も運営に関わっているとのことでした。
 発表後は、フロア全体での議論となりました。多くの自治体で取り組まれ始めていることもあり、「学習支援」や「子ども食堂」には「子どもの貧困対策」として予算が付きやすくなりましたが、全児童対象の遊び場・居場所事業にはなかなか予算が付きにくいのが現状です。荘保さんや西野さんのような取り組みができるのは理想的ですが、各自治体にはそれぞれの事情もあり、ままならないことも多くあります。それでも、そんな中でできることは何か?活用できる施設や予算はないか?など、活発な議論が行われました。荘保さんからは「中学校区に1つ、2人分の人件費と建物があれば居場所活動ができる」という力強い言葉もありました。高齢者施設の空き時間の活用、学童保育と学童に登録していない子の交流、つどいの広場(乳幼児の子育て支援事業)と10代の居場所のコラボなどなど、川西市でも活用できそうな案がいくつか出され、とても参考になりました。

 分科会が開催されたのは、宝塚市にある「フレミラ宝塚」という、大型児童センターと老人福祉センターの複合施設です。館内はとても広くて明るく、たくさんの子どもたちが来ていました。音楽やダンスのスタジオがあり、プロの人がボランティアで教えにきてくれることもあるのだとか。その他にも茶室や自習室など、とにかく設備がとても整っています。また、子どもたちが誰でも自分でやりたい企画を持ち込め、参加者が集まれば自分たちで実行できるという仕組みが設けられており、すばらしい取り組みだと感じました。

 3日間を通して全国の子ども支援に関わる方々にお会いすることができ、子どものことを考えて動いているおとながこれほどたくさんおり、それぞれに熱い思いをもっているということがわかり、とてもうれしく感じました。今回のお話のなかで参考になった視点や取り組みを、今後の活動に活かしていきたいと思います。

執筆:相談員・船越 愛絵(まなてぃ)
 


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