子どもオンブズ・コラム令和5年10月号 本屋さん、偶然が必然につながる場

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ページ番号1018503  更新日 令和5年10月30日 印刷 

本屋さん、偶然が必然につながる場

平野相談員イラスト
平野チーフ相談員のイラスト

 今回は私の好きな場所、「本屋さん」について書いてみようと思います。

 私は子どもの頃から絵本が大好きで、おとなになってからも本をよく読みます。そんな私にとって、本で溢れている本屋さんはとても幸せな場所です。「この本を買おう!」と目当てがあってわざわざ行くときもありますが、私の場合、電車をちょっと乗換えるときや、仕事帰りにふらっと立ち寄ることが多いです。大きな駅で人と待ち合わせをするときは、たいてい本屋さん。本屋さんであればいくらでも時間を過ごせるし、少しぐらい相手が遅刻しても苦にならないからです。

 そんな私が本好きになったきっかけも本屋さんでした。小さい頃、保育所に通っていた私は、迎えに来てくれた母とスーパーで買い物をしてから家に帰るのがお決まりのコースでした。そのよく行くスーパーのあるショッピングセンターにも本屋さんがあって、買い物が終わると、いつも少しだけ本屋さんに立ち寄り、母と絵本コーナーを一緒に見るのが楽しみでした。そんなふうにして絵本コーナーに立ち寄ったある日、母が「こんな本がある!」と手に取って見せてくれたのが、『ゆうこのてるてるぼうず』(清水達也/作・いもとようこ/絵・ひくまの出版)という本でした。

 ここで気づいた方もおられるかもしれませんが、私の名前が絵本のタイトルに入っていたのです。それだけでとても親近感が湧きましたし、表紙のやさしそうな絵も気に入って、私はすぐに「読んでみたい!!」と思いました。その日、夜寝る前に買ってきたばかりのその絵本を母に読んでもらいました。ちょっぴり切ないけれど、あったかいお話です。その後、繰り返しこの絵本を読んでもらい、お気に入りの一冊になりました。名前が同じというきっかけではありましたが、あのとき母が本屋さんで見つけなければ、この絵本には出会えていなかったように思います。そして、この絵本との出会いが、私を本好きにしたと言っても過言ではありません。

 今でも、この絵本を読み返すと、ストーリーの切なさにウルっとしますし、この本を読んでもらっていた自分が小さかった頃のことが昨日のことのように思い出され、懐かしくてうれしい気持ちになります。

 本屋さんではこんな偶然の出会いがその後も結構あって、私にとって本屋さんはいつも、何かいい発見ができる素敵な場所です。今はとても便利になって、わざわざ本屋さんに出かけなくても、インターネットで本を検索したり購入したりできます。そこにも「偶然」はありますが、それは何かしら画面上の偶然でしかないように、私には見えます。その点、本屋さんは、偶然にお気に入りを見つけられるだけでなく、その出会いには手触りがあって、これがやがて「必然」のものになっていく、そんな楽しさがあります。

 人との出会いもそういう意味では偶然です。誰とどこで出会うかは本当に偶然としか言いようがありません。けれど一度出会って、そこから具体的な関係が広がっていくと、もうそこからは偶然でなく必然です。オンブズで私はこれまでたくさんの子どもたちと出会ってきました。きっかけはその子が何か相談しようと思ってオンブズに電話をかけて、たまたまその電話を相談員である私がとって、そうして出会って、話をする。話す内容は、困っていること、しんどいと感じていることで、一緒にどうしたら解決するか頭を悩ませる。いい解決策がなかなか浮かんでこなくて、「あーでもない」、「こーでもない」と一緒に悩み考える。そうしているうちに、その子ども自身のなかにやがて力が湧いてきて、少しずつ状況が変わっていく。オンブズで私が子どもたちとやっているのは、こんな感じのことです。

 これまでまったく知らなかった人どうしが出会い、そこから生身の関係が広がって、やがてこれに支えられるようになっていく。そう考えれば、子どもたちにとっては学校がそういう場であればよいのですが、現実にはそこで傷ついてしまうこともあって、物事は容易ではありません。そういう目で見れば、オンブズもまた、出会いの「偶然」をやがて気持ちの安らぐ「必然」に代えていく、そうした仕掛けの一つなのかもしれません。オンブズに限らず、子どもたちが、偶然の出会いのなかで人に支えられ、元気をとり戻し、やがてそれがなくてはならない必然の関係になっていく。そんな場がいまの子どもたちにもどんどん広がってほしいなと思っています。

執筆:チーフ相談員 平野 裕子(ひらりん)

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