子どもオンブズ・コラム平成31年2月号 「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2018in 宗像」に参加して

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ページ番号1008368  更新日 平成31年3月5日 印刷 

「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2018 in 宗像」に参加して

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     鈴木相談員のイラスト

 「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2018宗像 分野別実践交流会議」(以下、自治体シンポジウム)が、2019年2月11日(月曜日)に福岡県宗像市で開催され、大倉オンブズパーソンと相談員の鈴木が出席しました。自治体シンポジウムは、当初、2018年10月6日(土曜日)・7日(日曜日)と2日間の開催を予定していましたが、台風の接近をうけて中止となり、その代替として、開催日を一日短縮した形で行われました。
 自治体シンポジウムは、子ども施策のあり方やまち・コミュニティづくりの展望を見出すことを目的にして、自治体関係者と研究者・専門家・NPOなどが連携・協力して、2002年から毎年開催されています。川西市子どもの人権オンブズパーソンは、川西市で開かれた第1回大会の開催事務局を担当して以来、貴重な研修の機会として、毎年参加しています。

 自治体シンポジウム前日2月10日(日曜日)には、「子どもの相談・救済に関する関係者会議」(以下、関係者会議)が開催されました。関係者会議の目的は、全国の自治体から子どもの相談・救済に関わる実務者(オンブズパーソン、相談員、事務局担当者など)やこれから同じような制度を作ろうとしている自治体の関係者が集まり、制度構築の背景や実際の活動、課題などを報告し検討し合う中で、子どもの人権相談・救済制度について理解を深めることです。
 今年度は、(1)相談員の役割と課題、(2)子どもオンブズパーソンによる学校における調整活動、(3)自治体が設置する子どもの権利擁護機関(子どもオンブズパーソン制度)の現状と課題、の三つをテーマに報告と議論が行われました。また、昨年度までなかった新しい取り組みとして、報告者との質疑応答だけでなく、報告をもとにしたグループディスカッションがありました。川西子どもオンブズからも、学校との調整活動について、話題提供をしました。子どもと教職員、子どもと保護者、保護者と教職員など、子どもをとりまく人間関係の中で、互いの思いにズレが生じて子どもが苦しんでいるとき、オンブズとしてどう活動するのか、各参加自治体・団体から様々な意見が出され、活発な議論が行われました。子どもにとって何が一番よいことなのか(子どもの最善の利益は何か)、子どもの思いを中心とした解決のイメージがどんなものなのか、実際のケース会議さながらに、議論は熱気を帯びたものとなりました。議論に参加した私も、改めてケースに向き合い、様々な解決アプローチがあることを学び、子どもを中心とした解決の大切さについて確認しました。

 自治体シンポジウム当日は、「地域コミュニティづくりと子ども―連携・協働でつくる子どもにやさしい社会―」を全体テーマとして、「子どもの相談・救済」、「子どもの虐待防止」、「子どもの参加」、「子どもの居場所」など、7つの分科会が開かれました。私は、「子どもの相談・救済」(第1分科会)に参加しました。第1分科会では、宗像市子どもの権利救済委員を長年務めてこられた弁護士の小坂昌司さんが、基調報告として「子どもの権利救済機関の「第三者性」と関係機関との「連携」」というタイトルで、5年間の宗像市での取り組みを報告されました。つづいて、東京都国立市の総合オンブズマン、福岡県筑前町こども未来センター、福岡県志免町子どもの権利相談室の3つの自治体と、民間団体である子どもの権利オンブズパーソンながさきからの報告を受け、全体で議論を行いました。
 分科会の報告と議論は、子どものSOSのサインや声を受けとめて、エンパワメントを支援する相談・救済機関が、子どもの権利擁護を図る中で、どのようにして第三者性を確保しながら、関係機関と連携を行うか、に焦点が当たりました。たとえば、宗像市では、学校への定期的な出張相談会を行う中で、子どもから見て、学校と救済機関が一体のものとして受け取られないよう配慮する一方、学校に相談会の結果をどのように報告するのか情報共有の仕方が議論されてきたようです。あるいは、同じ宗像市ですが、救済機関の相談室と家庭児童相談室の相談室が同じ部屋に置かれ、事務局の職員が兼任になっていることも、両機関の連携しやすさという利点と、第三者性の担保が難しいという課題とが、ジレンマとして語られました。相談・救済機関が親でも学校でもない第三者のおとなであるからこそ、子どもは安心して相談できる場所だと思えます。「第三者性は、救済機関の柱となる理念」という小坂弁護士の言葉が心に残っています。
 分科会の議論を通して、川西の子どもオンブズがもつ強みを改めて感じました。川西の場合は、オンブズが子どもの立場に立ち続けられるように、「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例」に支えられた形で第三者性が担保されています。また、活動開始から20年という時間を通して、現に困っている子どもの人権救済を図るなかで、学校や教育委員会、市の関係諸機関とさまざまに連携を積み重ねきたことが、別の案件で連携を図る際に互いの信頼の基礎となっているように思われました。

 分科会が終了してから開かれた公開コーディネーター会議では、全体の総括として、各分科会の様子を共有するとともに、子どもの権利条約総合研究所の運営委員である平野裕二さんから、国連・子どもの権利委員会による日本政府の報告書の審査・総括所見について、情報提供がありました。子どもの権利委員会では、子どもの権利が実現されるために十分な予算配分を行うことや子どもの権利擁護機関の設置を進めていくことなどが総括所見で指摘し、日本政府に是正するよう求めています。
 今年2019年は、「子どもの権利条約」が国連総会で採択されて30年、日本が条約を批准してから25年になります。川西子どもオンブズも、子どもの権利条約の考え方が基本にあります。子どもの権利について考える一年になればとの思いを強くしました。

 今回、関係者会議と自治体シンポジウムの出席を通して、全国の子ども支援に関わる方々とお会いし、お話をさせていただく貴重な機会となりました。ここで学んだことを今後の活動に活かしていきたいと思います。

執筆:相談員・鈴木伸尚(すーくん)

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 分科会の様子の写真

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