子どもオンブズ・コラム平成26年12月号 「一歩踏み出すちょっぴりの勇気」

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ページ番号1001703  更新日 平成30年3月8日 印刷 

「一歩踏み出すちょっぴりの勇気」(平野相談員)

平野相談員の似顔絵
  似顔絵:平野相談員

 私は子どもの頃、絵本を読むのが大好きでした。けれど、ある年齢を越えてから、本は読んでも絵本を読むことが少なくなりました。おとなになって、子ども向けのものだと思っていた絵本をあらためて読んでみると、なんだかほっこりした気持ちになったり、子どものときにはなかった発見があったり。今回のコラムでは、私のお気に入りの絵本を一冊紹介したいと思います。それは『おとなりさん』(作・きしらまゆこ/絵・高畠純)というかわいいお話。まず簡単に内容を説明してみます。

 森の奥に2軒の家がたっています。赤い屋根の家にはにわとりが住んでいて、隣の青い屋根の家には誰も住んでいません。にわとりはひとりで気ままな暮らしをしています。ところがある日、隣の青い屋根の家に、誰かが引っ越してきました。ひとりは気ままでよかったけれど、ちょうど退屈さも感じていたので、にわとりはよろこびました。にわとりはおとなりさんに会えるのを楽しみ待ちます。けれど、ぜんぜん「おとなりさん」に会えません。次の日も、次の日も、今日こそは!と待ちます…。でも会えません。そうなると、にわとりはいろいろ考えだします。引っ越してきたんだから「むこうからあいさつにくるべきだよね」と腹を立ててみたり、「ひっこしでつかれてねこんでいるのかな?」と心配してみたり、「ひとりのほうがきらくだもんね」と強がってみたり。でも最後には「いっしょにあそぶとたのしいだろうなぁ」という正直な気持ちが盛り上がってきて、「やっぱり、あいたい!」と思います。それであいたいという気持ちを込めて、「うちにあそびにきませんか」と手紙に書き、青い屋根の家のドアにはっておくことにしました。
 その日、夜になってにわとりが寝てしまってから、青い屋根の家のドアがひらいて……、出てきたのはなんと!ふくろうです。ふくろうもふくろうで、引っ越してきてからずっと隣にあいさつにいっていたのにすれ違っていました。にわとりとふくろうでは生活時間がまるっきり違うのです。ドアにはられた手紙を見つけたふくろうはおおよろこび。「ぜったいいきます」と返事をかき、赤い屋根の家のドアにはりました。
 次の朝起きたにわとりは、返事を見てとてもよろこんで、身じたくして、料理をして、部屋を飾りつけて待ちます。待ちます。待ちます。……。でも、日暮れになっても誰も来ません。一方、ふくろうはふくろうで、いつもより早く起きて、日が暮れて暗くなるのを待ちます。待ちます。待ちます。……。でも、なかなか日が暮れません。そうしてにわとりもふくろうもあきらめかけますが、最後に、にわとりは「もうこないかな?でも、ちょっとそとをみてみよう」と思い、ふくろうは「もういいかな?ちょっとそとにでてみよう」と思って、一歩ドアの外に出てみました。そこでにわとりとふくろうはやっと出会います。

 この小さなほほえましいお話しは、にわとりとふくろうのやりとりを通して、人と人の出会いやコミュニケーションに大切なことをそっと伝えてくれているように思います。人間の世界でも、コミュニケーションの大切さや難しさがいろいろなところで話題になり、上手くいかなくて悩んだり、しんどい思いをしたり。でも、コミュニケーションの基本は、難しいことではなく、特別なスキルでもなく、出会いたい、関わりたいという気持ちが一番大切なんだなぁと、あらためて思います。 すれ違うこともあるけれど、お互いにちょっぴり勇気を出して一歩踏み出してみることで開けてくる世界がある。現実の世界では、こんなにうまくいくとは限りませんが、「相手のことを思いながら一歩踏み出す」という気持ちが人との出会いの中心にあるということを教えてくれる絵本です。私も日々の人との出会いのなかで、こういう気持ちを大切にしたいと思っています。

執筆:相談員・平野裕子(ひらりん)
 


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