子どもオンブズ・コラム 令和5年3月号 退任のごあいさつ 〜 「第三者」としてシステムに関わるということ〜

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ページ番号1017549  更新日 令和5年3月31日 印刷 

退任のごあいさつ ~「第三者」としてシステムに関わるということ~

大倉オンブズイラスト
大倉代表オンブズのイラスト

 2018年にオンブズパーソンに就任してから、早くも6年の月日が経ちました。毎週の研究協議やケースへの関わりを通じて、オンブズパーソンとして何を考え、どのように行動すべきかを少しずつ学ばせていただきつつ、自分なりに試行錯誤を重ねながら、あっという間に過ぎ去った6年間だったように思います。一緒に仕事をさせていただいたオンブズパーソン、相談員、事務局の皆さん、子どもにとって「最もよいこと」を模索して協議を重ねてきた関係者の方々、そして何よりもオンブズを信頼して、自分の気持ちを伝えようとしてくれた子どもたちに、心から感謝しています。

 私がこの仕事を通じて学んだことは数え切れませんが、特に強く印象に残るのは、オンブズが「第三者」であることの意味です。
 子どもの権利の侵害が起きているとき、しばしばそこには子どもと周囲の他者、あるいは周囲の他者同士の関係がこじれ、うまくいかなくなっている状況があります。保護者も、学校の先生も、その他の関係者も皆が「子どものため」と思っているのですが、各自の「子どものため」がすれ違っていたり、そこに密かに「自分(おとな)のため」が混ざり込んでいたりする結果、子どもを取り巻く周囲の人々同士が対立し合い、その対立構図の中で子どもが置いてけぼりにされているといった事態を、数多く見てきました。人と人との関係のネットワーク全体を一つの「システム」と見たときに、それはあたかもそのシステムが出口なしの膠着状態や悪循環のループに陥っているかのような状況です。そうした状況において、オンブズはそのシステムに「第三者」として関わっていくことになります。

 私が研究協議等で、ものを考えるときの重要な視点は、いかなる「第三者」としてシステムに関わっていけば、そのシステムが良い方向に向かい、子どもの権利が回復されるかということです。なぜこのようなことを言うかというと、実は第三者性にもいろいろあるからです。

 例えば、オンブズは、子どもから見れば保護者でもなく、学校の先生でもなく、また同年代の友人でもない「第三者」であり、そのような立ち位置から粘り強く耳を傾けるからこそ、子どもがそれまで誰にも言えなかったような思いや意見を口にしてくれるといったことも生じます。また、オンブズは学校から見れば、子どもへの対応がうまくいっている日々の業務中にはなかなか出会うことのない「第三者」です。何かの問題が生じたときに連絡をしてきて、場合によっては事情を聞かせてほしいとやってくる「第三者」に対して、学校として身構えたり、警戒したりするのは、むしろ自然なことかもしれません。また、オンブズの職責には、子どもの周囲の人間関係のネットワークを越え、社会的制度も含めた人間活動のシステム全体を俯瞰的に眺めて、システムに変化をもたらすような制度的改善を提言する機能も含まれています。このようなマクロな次元での「第三者」としての視点もあるわけです。

 こうしたさまざまな第三者性(異他性)を帯びたオンブズが、子どもを取り巻くシステムに関わることで、うまくいけばシステムが良い循環へと動き始めますが、悪くすればオンブズに対する反発を招いて、オンブズ自身が問題の渦に巻き込まれていくことにもなります。言い換えれば、オンブズの有する第三者性は、あるシステムを生きる人々にとってときに頼もしい特効薬にもなり、ときに刺激的・脅威的なものにもなり得るということです。オンブズとしては、誰かを過度に傷つけることなく適切にこの第三者性を発揮して、子どもの意見が尊重され、それを軸にした問題解決がなされていくようなシステムの良い循環をいかに生み出していくかということに、細心の注意を払い、システムへの関わり方を考える必要があります。オンブズパーソンとしての専門性の一つはその点にあるのではないかというのが、私が6年間でたどり着いた一つの結論です。

 求められるオンブズワークの中身は、恐らく時代とともに変わっていくものだと思います。時代や社会状況が変われば、子どもにとって「最もよいこと」の中身も、それを実現していく方法も変わるからです。ですが、システムに対して「第三者」として関わることで、子どもの意見を軸にした関係者の協働体制が構築されるよう促していく点にオンブズの特徴的な役割があるということは、これからも変わらないのではないかと思います。今後のオンブズパーソンの方々が、この第三者性をいかに発揮されていくか、楽しみに見守っていきたいと思います。

執筆:代表オンブズパーソン 大倉 得史 (おおくら とくし)

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