子どもオンブズ・コラム 令和5年9月号 「拘束」する校則の「考察」?

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ページ番号1018357  更新日 令和5年10月2日 印刷 

「拘束」する校則の「考察」?

渡邊オンブズパーソン
渡邊オンブズパーソン イラスト

 学校の「校則」って何のためにあるのでしょうか。

 公立学校と私立学校ではその趣旨は異なるように思われますが、髪型、髪の色から、制服、靴下に至るまで、学校には様々な校則が当然のように存在します。とりわけ、中学高校では、男女交際やスマホ使用の制限、バイクやアルバイトの禁止等、校則の「拘束」は私生活にも及びます。

 文科省が令和3年8月に「校則等の見直しに関する取組事例」を紹介したり、令和4年12月に改訂された「生徒指導提要」でも校則の見直しについて触れられていたりするなど、最近では、校則の見直しが盛んに言われるようになりました。大阪弁護士会でも今年8月には、校則に関するシンポジウムを開いています。

 私自身は、仕事柄、学校の先生方とよく協議したりするのですが、先の「校則が何のためにあるのか」という質問に対して、納得のいく答えを得たことがありません。例えば、「赤い髪の学生を採用する会社がありますか?社会に出て恥ずかしくないようにしているんです」「勉学が本分なので髪型なんかに時間をとられるべきではない」などと言われたことがあります。しかし、そもそもその会社に入社したければ採用活動のときは髪の色を直すでしょうし、青春は勉強以外にもたくさん時間を費やすものではないか、などとすぐに屁理屈的に反発を感じてしまうわけです。
 この点、私立学校は、教育機関でありますが経営も必要ですから、児童生徒がたくさん集まるよう、世間からどう見えるか、ということを気にしないといけません。また、現存する校則に了解して入学したという「在学契約」という性質上、公立学校よりも厳しい校則の有効性や拘束力が肯定的に解されているようです。

 しかし、弁護士としてみると、例えば髪型や服装は、本来的には人格権という「人権」に属する事柄なので、そもそも髪型や髪の色を規制する校則が許されるはずがない、という見解が一般だと思います。思い切ったことを言えば、「できる限り人に迷惑をかけない」というルールさえあれば、校則は不要なのではないかとも思ってしまいます。
 他方で、世の中には「公序」とか「常識」とか「マナー」等があるわけで、全くルールがないわけではありません。これらが校則を支える大きな根拠であったであろうことは、私でもなんとなく想像がつきます。

 ところで、私が子どものころとは比べ物にならないくらい、世の中は多様性の尊重に向けてまさに激変しようとしている最中です。ダイバーシティもインクルージョンもSDGsも。おそらく昭和の時代にはなかったか、あまり議論されていない概念です。そんな中で、かつての「公序」や「常識」が今でも通用するのか、そんなことを考えた時、細かい髪型や服装まで厳しく言うべきだと考えているのは、私のような昭和世代の一部だけではないか、と感じたりするわけです。そして、今の学校の管理職のみならず、会社の経営者層においても、いまだ昭和世代が圧倒的に幅を利かせている状況にあります。ましてや、大人の社会においても、ハラスメントや貧困等、不合理なことは山ほど存在する状況にあります。

 そんな中、「なぜ校則が必要か」という質問に対する私の現時点での答えは、「大人になったときに存在する不合理なルールに耐える練習をするため」というものです。
 今の子どもが、校則の見直しを推し進め、やがて大人になったころには、社会からも不合理なルールが一掃されていることを願います。そのころには、学校には「できる限り人に迷惑をかけない」くらいの内容で、細かい定めはなくなっているような気がするのです。

   (なお、以上は、私の個人的見解ですので、ご了承ください。)

執筆 オンブズパーソン 渡邊 徹

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