子どもオンブズ・コラム平成29年3月号 退任(退職)のごあいさつ

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ページ番号1001679  更新日 平成30年8月21日 印刷 

人の世の辛苦をこそ逆にパワーにして!

浜田オンブズ
似顔絵:浜田代表オンブズパーソン

 6年間、お世話になりました。早いものです。
 私はこれまでも長く「子ども問題」にかかわる仕事をやってきましたが、このオンブズでの経験を通して、その問題の広さ、深さを、あらためて強く感じるようになりました。そこで感じた一つのことがあります。
 私は、若かったころ、H.ワロンという発達心理学者の書いた本をよく読んでいました。その本のなかに「発達は障害のなかにこそ見える」という、謎のような言葉を見つけたことがあります。彼は精神科医として重度の障害をもつ子どもたちとかかわり、それをもとに子どもの発達を理論化しようとした人ですが、その理論はほんとに難しくて、ほとんど歯が立たなかったというイメージが残っています。ただ、この言葉だけは、いま何となく分かるような気がします。
 子どもの発達というのは自然のたまもので、人為ではほとんど左右できません。裏返していえば、子どもは放っておいても、人為を超えて、その自然のままに見事に育ちます。ただ、一方、自然はまた「こわれやすいもの」で、ちょっとしたことで大小の「ほころび」が生じます。そして、じつは、そのほころびのなかからこそ自然の仕組みが具体的に見えてくるもの。たとえば、見事に織られた帯の絵柄は、外から眺めただけでは、それがどのように織られているかが分かりませんが、そこにちょっとした糸目のほころびがあれば、そこからもともとの織り糸の絡み方が見えてきます。それと同じように、子どもの発達もまた、そのほころびを見つめることによってこそ、その自然の不思議さが具体的に見えてくる。ワロンが言いたかったのは、そういうことではないかと思うのです。
 この言葉がオンブズの仕事にも通じるのではないかと、いまの私には思えます。何事にせよ、事がうまく回っているときには、その「事の本質」はなかなか見えません。でも、うまくいかなくて関係が「もつれ」、日常に「ほつれ」が生じたとき、そこにはじめて人どうしの関係の本質のようなもの、人の生きる本来のかたちのようなものが見えてくるような気がします。そう考えれば、人の世の「もつれ」「ほつれ」に出会うことは、それ自体は辛く苦しいことですが、同時に、人の「本来」に気づき、その「本来」を取り戻すきっかけにもなるもの。そう言っていいはずです。
 こうした反転をこそ力に、これからのオンブズがさらに活躍の場を広げていかれるよう、あらためて期待のエールを送ります。

執筆:代表オンブズパーソン・浜田 寿美男(はまだすみお)

安心して依存しあえる社会を子どもたちに手渡すために

退職のあいさつに代えて

渡邊相談員の似顔絵
渡邊チーフ相談員

 「自立は、依存先を増やすこと。」
 「希望は、絶望を分かち合うこと。」

 小児科医の熊谷晋一郎さん(脳性まひの障がい当事者でもある)が、このような「自立」「希望」についての考え方を提唱し、インターネット上で話題を集めています。私も以前、あるインタビュー記事で目にしてからというもの、事あるごとにこのフレーズを思い出します。
 これまで8年と9カ月、オンブズパーソンの相談員としてお世話になってきました。この間、たくさんの子どもたちと出会い、話を聞かせてもらうなかで痛感してきたことがあります。それは、子どもの抱える困難の背景には、いまの社会全体の厳しい状況があるということです。子どもにとっての依存先であるはずの周囲のおとなも、日々の暮らしのなかで多様な依存先を見つけにくい、あるいは人生のままならなさにぶつかるなかでの苦悩・絶望を分かち合える人間関係をもちにくい状況が生み出されてしまっているのではないでしょうか。
 オンブズパーソンは、制度運営開始より、今まさに苦しんでいる子どものSOSを受けとめ、その解決を応援する取り組みを続けてきました。その重要性は、これからも決して変わることはないでしょう。その上で、子どもが理不尽に苦しまなくてもよい社会をつくるには、おとな同士がつながり、安心して依存しあえるような関係を暮らしのなかでいかに取り戻していけるのかが鍵になると感じています。
 オンブズパーソンの現場を離れてからも、誰もが安心して依存しあえる社会を次代の子どもたちに手渡すために、私なりにできることを考え、取り組みを続けていきたいと思います。
 最後になりましたが、この仕事を通してご縁をいただいたすべての方々に、この場をお借りして感謝申しあげます。本当にありがとうございました。

(チーフ相談員 渡邊 充佳/みっちー)

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