子どもオンブズ・コラム令和2年10月号 ありのままの虹を見るために

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ページ番号1011854  更新日 令和2年10月20日 印刷 

ありのままの虹を見るために

イラスト
   中村相談員のイラスト

 色の数は無限にあり、僕たちの暮らす世界はさまざまな色であふれています。鮮やかな青い空や植物の緑など、そのどれにも色があり、名前をつけ見分けることで、さまざまな色を楽しんできました。たとえば日本では虹の色の数は7つで、「赤橙黄緑青藍紫(せき/とう/おう/りょく/せい/らん/し)」の順に並んでいると考えられています。ただ、世界のどこでも虹が7色かというとそうではありません。アメリカでは「赤橙黄緑青紫」の6色、ドイツでは「赤黄緑青紫」の5色とされており、日本でも昔は5色とされていた時代があったそうです。これは、地域によって発生する虹の種類が異なるわけではなく、虹がいくつの色でできているかが地域や文化、時代に影響を受けていることを表しています。現代で生活する僕たちには想像もつきませんが、昔の沖縄では色を「明/暗」で区別していたため、虹の色はたったの2色(赤と青/黒)だった時もありました。日本で虹が7色とされるのは、日本の学校教育に7色の虹色が取り入れられたことが主な理由だそうです。日本では「虹は7色(赤橙黄緑青藍紫)であることにしよう!」と決めて暮らしてきたので、僕たちは虹が7色であると思っているということになります。
 科学的には虹の色は連続した色の変化なのできっちりと区別することはできません。人が見ることのできる色が寄せ集められるかたちでグラデーションになっているのが「虹」ということになります。なので、日本で暮らす人の中にも7色に見える人もいれば、「自分には5色ぐらいしか見えないけど、なんとなく虹は7色って決まってるし、そういうことにしよう。」といった人もいるのではないでしょうか。人の見分けられる色の限界は100万色といわれますが、そもそも色の見分け方や感じ方には大きな個人差があるので、人は色名をつけることでさまざまな色の概念を誕生させ、共通認識をつくってきたのです。同様に、「7色の虹」というのもあくまで共通認識だということです。
 そうなると、虹は7色以外にもありえるということになります。人が見分けることのできる色の数が100万色あるならば、連続した色のグラデーションである虹のうち色名のついた7色しか見ていないことになります。「7色の虹」という共通認識が「赤橙黄緑青藍紫」という色の並びを与えてくれる一方で、他の99万9993色をどこかに置いてきてしまうのではと思うのです。名付けて見えるものがあることと、名付けてないものは見えないことは表裏一体です。
 僕たちの生活する世界には多くの共通認識があり、それは社会が円滑に進むための常識のようなもので、形作ると同時に先入観をつくる色メガネになってしまいます。僕は本年度から相談員としてオンブズに関わり、子どもの抱える悩みや困りの話を聞いてきました。学校生活で悩む子どもの話を聞いていると、学校生活を経験してきたおとなとして、ついつい子どもの気持ちを先回りして「何々で悩んでいる/困っている」と分かった気になるものの、話が進むにつれて僕の予想とは違った悩みや困りが出てきて困惑することがあります。「虹は7色である」といった常識が虹のとらえ方を制限してしまうように、子どものありようを色メガネで見てしまっては、本当に困っていること悩んでいることに耳を傾けることができません。
 子どもの性格や特徴、困りや悩みは名付けることで明確になり、解決方法を考えることにつながりますが、まずは自分自身が色メガネをかけて物事を見てしまっていることに自覚的になりたいと思います。そのうえで、名付けていないものに気づけなくなっている可能性があることを頭のかたすみに入れながら、子どもの話を聞いていきたいと思います。
 また、次に虹を見る機会があれば7色という概念をいったん忘れ、虹のありのままを見て、何色に見えるのか試してみようと思います。

執筆:相談員・中村誠吾(せいくん)
 

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