子どもオンブズ・コラム 令和4年10月号 コロナ下をふりかえり、子どもとともに子どもの権利を学ぶ

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ページ番号1016049  更新日 令和4年11月29日 印刷 

コロナ下をふりかえり、子どもとともに子どもの権利を学ぶ

長瀬オンブズパーソン
長瀬オンブズパーソン イラスト

 コロナ下が始まり、2年半以上が経過した。私は、2020年5月に国連・子どもの権利委員会が出した声明に出会い、それにまつわる絵本を出版するなどの行動をするなかで、多くのかたとコロナと子どもについて考える機会をいただいてきた。その際、いつも最初に投げかける問いが、「あなたは、コロナによってどんな気持ちでいますか?コロナによる否定的な影響(いやだったこと・しんどいこと)と肯定的な影響(よかったこと・うれしいこと)を教えてください」というものだ。

 コロナ下の気持ちと経験を尋ねる意図は主に三つある。
 ひとつは、歴史的な災禍を生きる自分たちの気持ちと経験を共有することである。コロナ下が始まって以降、私たちは、それぞれの段階でその時々に応じて、自分たちの生活の仕方を調整してきた。コロナによる影響、それにまつわる気持ちを立ち止まって振り返り、お互いに共有することで、自分たちの生きる状況を捉えなおし、自身の気持ちを言語化し、自覚する機会としている。そして、全体で共有することで、一人ひとりの経験は社会的な影響を受けていること、職業や属性によってその影響は異なること、そして、それぞれの工夫と調整が伝わる。
 もうひとつは、人権や子どもの権利を具体的に考えるためである。例えば、「楽しみにしていた修学旅行がなくなって悲しかった」という気持ちと事柄は、子どもの権利条約の第28条や第29条の教育にかかわる権利と重なり、余暇や文化的な活動という点では第31条の休み・遊ぶ権利とかかわる。コロナ下で、第28条・第29条にかかわる教育活動が制限され、第31条にかかわる学校における余暇的な部分が失われたことが分かる。人権や権利というと難しいもの、生活から遠いもの、と捉えているかたが少なくない。それでも、気持ちを手がかりにすると、自身の生活や人生と人権や子どもの権利がどのようにつながっているかを考えることができる。
 そして、コロナによる影響は、「今・ここ」だけではなく、何らかの形で残り続ける。歴史的な記録として残しておくのは大事ではないかと考え、ワークを行ってきた。

 2022年9月、久しぶりに川西市内の中学生の職業体験(トライやるウィーク)が再開された。コロナ下で中学生がどのようなことを感じているのかを知りたい思いもあり、上記の問いを盛り込んだワークを行った。子どもや若者にこれらのワークを実施するのは、子どもの権利の視点からも重要である。なぜなら、コロナによってどのような影響を受け、何を感じていたかを知ることは、今後、おとなが子どもに何をしていく必要があるのかを考える手がかりとなるからだ。実際のワークによる子どもの声については、下記に掲載(ファイル添付)するので御覧いただけたらと思う。

 ワーク実施後、参加した子どものひとりが、「コロナの影響ってけっこうあったんやな」とため息のようにつぶやいた。思わず「そうだよ。私たちはけっこう社会の影響を受けながら生きているんだよ」と応答した。私たちは社会の影響を受けながら生きており、子どもの権利の視点のある社会と、その視点がない社会とでは、子どもや若者の経験は異なると考える。コロナが始まった時期に首相による子ども対象の会見があったノルウェー・カナダ・韓国、若者の協力に感謝をするスピーチがあったデンマーク、ロックダウンから学校が再開した際に子どもの努力をねぎらう文書が出された英国とは、私たちの社会は異なる。子どもの声が引き出され、その声に応答した対応や努力をしたかどうか、その影響はここから現れる。

 子どもは子どもであるというだけで、その知識と経験のなさから権利を奪われてしまうことが少なくない。ただ引き受けて我慢をしないためには何が必要だろうか。
 私自身は、子どもとおとなが子どもの権利を知り、学ぶということに期待をしている。自分たちが感じることや違和感が、人権や子どもの権利につながっているかもしれないと気づくことは、自分の感覚や存在が肯定され、支えられることだ。その一つひとつの気づきが、自分自身で考え、行動する力を支えるのではないだろうか。ワークを積み重ねるなかで、子どもだけでなく、おとな自身も声を取り戻すところから始める必要性も痛感している。子どもが主体的に生きることを支えるために、オンブズパーソンの存在を伝えるとともに、子どもの権利学習をどうすすめるのか、についても考えていきたいと思う。

執筆:オンブズパーソン 長瀬 正子(ながせ まさこ)

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