子どもオンブズ・コラム 令和8年5月号 変わっていくもの、変わらないもの
ページ番号1024414 更新日 令和8年5月1日 印刷
変わっていくもの、変わらないもの
デジタル教科書を学校教科書とする法改正が進んでおり、巷では様々な意見があるようです。弊害としていわれているのは、導入コストが嵩むことのほか、一覧性がなくなる等紙媒体での利点が失われる、健康への悪影響が懸念される等のようです。
私といえば、子どものころは、当然紙ベースの書籍で学習してきましたし、大学生から弁護士になるまでも、辞書や六法に赤鉛筆で線を引いて勉強してきた世代です。昨今の裁判所もずいぶんとデジタル化しているわけですが、今でも、裁判所に提出する予定の書面はいったんプリントアウトしてみないと誤字や脱字も発見できないし、考え方が整理できないのが実情です。ですが、「紙ベースの方が優れているのでデジタル教科書には断固反対」という立場でもありません。
私がいえるのは、紙ベースしか知らない中で学習してきた世代なので、自分の経験だけで語れる知見はたかが知れている、という点だけです。デジタル教科書の今後については、本当のところは勉強不足で私にはよくわからないのですが、オンブズ的にいえるのは、導入に際して子どもの声をきいているのか、ということくらいでしょうか。ただし、子どもだって今から体験していくことですので、希望はあれど、当然何が最善の利益になるかはわからないでしょうし、教育の内容や方法は、私たちおとなが責任をもって検討しなければならないことだと思われます。
さて、現在の社会を概観すると、デジタル化が進んでいる会社では必要な情報は全てクラウドに格納され、ファクスだけではなく、プリンターすら消えつつあります。新聞もスマホで読むし、官公庁も印鑑書類の廃止等、いうまでもなく、あらゆる面でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が激しく進んでいる状況です。私としては大変残念ですが、近い将来、印刷物というものは、私たちの生活ではほとんど姿が見えない社会が来るような気がします。そのような、私たちおとなですら経験していない社会に、これから出ていく子どもたちを責任をもって確かな方向性に導くという作業はなんと困難なことでしょう。そういう意味でも、第一線で常に子どもの声を感じている教員の方々には頭が下がる思いです。デジタル教科書も、いきなり紙からデータに変わるのではなく、様々な価値観を唱えるおとなにも忖度?しながら、少しずつ変わっていくのだと思います。
無論、多様で様々な価値観を超えて、世の中には普遍的な価値を持っているものもあると思います。平和や愛情等という大それたものではなく、例えば、学校のように、多くの仲間が集まって交流し、ともに成長する場、には普遍的な価値があると長らく思っていました。
ところが、デジタル教科書のみならず、社会におけるコミュニティにもDX化の進展に伴う変化が少しずつ見られます。コロナ禍を経たことも大きいのですが、会社の方との打ち合わせも、事務所にお越しいただいたり、会社に出向いたりすることも激減し、web会議でリモートにて行うことが一般化しています。ちょうど今頃は、新入社員の歓迎会等で繁華街も賑わっていますが、「飲みニケーション」等と言っていると、すぐにハラスメントだと言われかねないくらい、直接の懇親の場は減っているように感じます(他方で、webツールによるリモート交流の場は増えていて、それはそれで便利なのですが…)。気の合う友達や結婚相手すら、今はSNSやアプリで見つけ出すのが一般的なようです。
コミュニティ全体を語るには、私の経験は一面的で貧弱なのですが、このような新たな状況がもっと本格化していくであろう未来の中で、子どもたちは生きていくことになりそうです。そんな子どもたちが、毎日学校という集団での生活で、何を学び、何が克服されるのか、このことが大きく問われているようにも感じます。少なくとも、DX化が進んでも、対面での直接的な交流には普遍的な価値があり、学校ではそれがふんだんに経験できる、と思いたいのです。ただ、そんな当然の学校の在り方すら、普遍的な価値として将来的にも当然に残っていくのか、かなりの部分がリモートにとって代わられるのか、この点も私にはまだわかりません。「下手の考え休むに似たり」とはよくいったもので、様々なことを考えれば考えるほど、わからないことばかりで本当に困ってしまいます。
執筆 代表オンブズパーソン 渡邊 徹
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