子どもオンブズ・コラム 令和5年6月号 川西市にとって「こども基本法」ができたことの意味

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ページ番号1018056  更新日 令和5年6月27日 印刷 

川西市にとって「こども基本法」ができたことの意味

浜田オンブズパーソン
浜田オンブズパーソン イラスト

1. はじめに ~子ども基本法制がスタート~

 この4月ビッグニュースが舞い込んできたことを皆さんはご存知でしょうか。
 2023年4月1日、政府に「こども家庭庁」が設置され、「こども基本法」が施行されました。この2つを合わせて「子ども基本法制」と言います。
 こども基本法は、日本国憲法及び国連子どもの権利条約の精神にのっとり、子どもの権利が保障されることを目的とし、子どもの権利条約の4つの一般原則(生存発達の権利、子どもの最善の利益、子どもの意見の尊重、差別の禁止)に相当する規定がおかれています。
 また、こども基本法には子ども施策への子ども等の意見の反映などが明記され、さらに、子ども施策を総合的・包括的に行うためのこども家庭庁が設置されました。
 私たち川西市子どもの人権オンブズパーソンにとって、子ども基本法制のスタートは、日本の子どもの権利保障を進展させる上で、とても大きな意義をもつと考えます。

2. 子どもにとって最もいいことは、子どもの意見を聴くことから

 こども家庭庁は、子育て支援や子どもの貧困対策、児童虐待防止、少子化対策といった幅広い分野を受け持ちます。こども基本法の付帯決議では、「こども施策の推進は、全てのこどもについて、こどもの年齢及び発達の程度に応じて、こどもの意見を聴く機会及びこどもが自ら意見を述べることができる機会を確保し、その意見を十分に尊重することを旨として行うこと」が決議されました。

 同じく、2022年6月8日に可決された改正児童福祉法では、児童の意見聴取等の仕組みの整備が明記されました。「児童相談所等は入所措置や一時保護等の際に児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の意見・意向を勘案して措置を行うため、児童の意見聴取等の措置を講ずることとする。都道府県は児童の意見・意向表明や権利擁護に向けた必要な環境整備を行う。」となっています。(厚生労働省子ども家庭局長「児童福祉法等の一部を改正する法律」 の公布について(通知)令和4年6月15 日より)

 こども基本法第3条の基本理念に述べられている一般原則は、国連子どもの権利条約の全ての条文の前提として踏まえなければならない重要な原則です。子どもの権利条約の第2条 差別されない権利、第3条 子どもの最善の利益原則、第6条 生命、生存・発達の権利、そして第12条 子どもの意見の尊重 の4か条が、そこに位置づけられています。

 これに関係して、国連子どもの権利委員会はこれまでに何回かにわたって一般的意見を明らかにしています。その中では、とりわけ第12条即ち子どもの意見表明と参加をより積極的に、かつ具体的に確保することを通して、第3条即ち子どもの最善の利益を不断に実現していくことが繰り返し述べられています。(注1)

3. こども基本法に自治体の役割が明記されました

 こども基本法では、国連子どもの権利条約の理念を各自治体の施策に反映させることを求めています。子ども計画・子ども大綱、その計画の市民への公表、これまでの子ども・若者施策の一体化、また、子ども施策の策定、実施、評価にあたっては、子どもと保護者・関係者の意見を反映させるための必要な措置を講ずることが求められています。
 以下、長くなりますが、こども基本法から引用します。

(都道府県こども計画等)
第10条 都道府県は、こども大綱を勘案して、当該都道府県におけるこども施策についての計画(以下この条において「都道府県こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 市町村は、こども大綱(都道府県こども計画が定められているときは、こども大綱及び都道府県こども計画)を勘案して、当該市町村におけるこども施策についての計画(以下この条において「市町村こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
3 都道府県又は市町村は、都道府県こども計画又は市町村こども計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 都道府県こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第9条第1項に規定する都道府県子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第9条第1項に規定する都道府県計画その他法令の規定により都道府県が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
5 市町村こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第9条第2項に規定する市町村子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第9条第2項に規定する市町村計画その他法令の規定により市町村が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。

(こども施策に対するこども等の意見の反映)
第11条 国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

 上記の11条は「努めるものとする」という努力義務規定ではなく、「こども・・・の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」と措置規定となっています。

 すでにこども家庭庁では、自治体の子ども施策において子どもの意見を反映させるための全国の『自治体実践事例集』(グッドプラクティス集)などを策定しています。(注2)

4. 川西市の子ども施策のあらゆる場面で子どもの意見の反映を

 川西市子どもの人権オンブズパーソンは公的第三者機関として、この20年あまり子どもの声に耳を傾ける中で「どうしたら安心できるか」「どんなふうになればいいと感じるか」など対話しながら、子どもと「解決イメージ」を分かち合ってきました。孤立し、自分を責めていた子どもたちは自分の気持ちや見解を表明し、解決策を自分で選択することを通して、奪われていた内なるチカラを取り戻す契機となると考え、取り組んできました。

 つまり、川西市子どもの人権オンブズパーソンは、こども基本法で明記された「子どもの意見表明・参加権」を大切にすることを通して、子どもの最善の利益を具体化していくアプローチを第三者の立場から実践してきました。それは、子どもの権利条約に基づくことによって開かれる、子どものエンパワーメントの起点だと考えています。

 2023年4月、こども基本法ができたことの川西市にとっての意味とは何でしょうか。
 それは、川西市での20年のとりくみ(グローバルスタンダードなとりくみをローカルレベルの実践にしていくこと)を、日本政府のとりくみ(ナショナルレベルの法律)がようやく追いついてきたことだと言えます。これは川西市にとって誇るべきことです。

 私は、これまでの川西市でのオンブズワークの経験をもとに、公的第三者機関の取り組みに止まらず、これからは川西市の子ども施策のあらゆる機会において、子どもの意見を聴き、その意見を施策に反映してもらえるよう提案させていただこうと考えています。

 執筆 オンブズパーソン 浜田 進士

(注1) 第3条「子どもの最善の利益」と第12条「子どもの意見の尊重の原則」との間に緊張関係はなく、2つの一般原則の補完的役割が存在するのみである。一方が子どもの最善の利益を達成するという「目的」を定め、他方が子ども(たち)の意見を聴くという目標を達成するための「方法」論を用意している。
 実のところ、第12条の要素が尊重されなければ第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条は、自分たちの生活に影響を与えるあらゆる決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している。
 (国連子どもの権利条約 一般的意見12号『意見を聴かれる子どもの権利』パラ74) 平野裕二氏 日本語訳より
(注2) 自治体におけるグッドプラクティスについては以下のホームページを参照してください。子どもにやさしく解説した報告書もあります。
 「こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会」 こども家庭庁ホームページ

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