子どもオンブズ・コラム 令和5年2月号 言葉の神が降りてくるまで
ページ番号1017067 更新日 令和5年2月21日 印刷
言葉の神が降りてくるまで

このコラムは、過去にオンブズに相談をしてくれた子どもたちをはじめ、「子ども☆ほっとサロン」に参加している子どもたちや、トライやるでオンブズに来てくれた子どもたちに送る「ほっとサロン通信」に載せます。また、毎年発刊する「オンブズレポート」にも掲載をしているものです。オンブズで相談員をしている中で感じることや日々の生活の中で感じ考えたことをコラムとして書かせていただくのですが、今回なかなか書くことが見つかりませんでした。僕自身、何か書きたいことがまとまらないと書き始めるのが難しい性格で、いつも直前にコラムの神が降りてくるのを今か今かと待っています。しかし、今回はコラムの神は降りてくる気配はありませんでした。そこで今回のコラムでは、自分の感じたことや考えていることを誰かに伝えるしんどさ、そんなところから出発しようと思います。
オンブズの相談員として子どもから話を聞くことの特長は、第三者の立場で話を聞けることだと実感しています。オンブズくらぶで子どもの話を聞いている時、相談員は子どもにとって保護者でもなく学校の先生でもない、そんな存在として話を聞きます。その時に相談員として一番大事にしていることは、子どもの気持ちです。子どもが直面している問題に対して、子ども自身がどう感じているのか、どう解決していきたいと考えているのか、そこを汲み取るのが相談員の第一の仕事と言ってもいいと思います。
オンブズに相談に来てくれた子どもが、最初から自分の困っていることや自分の気持ちをすらすらと話してくれることは多くありません。たとえば「学校に行きづらい」ことについて子どもと話している中で、学校になぜ行きづらいのか「分からない」という答えが返ってくることがあります。しんどい状況にある中で、自分の感じていることを表現する言葉が見つからなかったり、自分の気持ちがどこにあるのか分からなくなっていることもあります。特に不登校の問題では、学校に行きづらくなった原因になる部分と、不登校が長期化する中で生じる学校に行きにくい理由が異なってきたりして、子どもの気持ちも変化していきます。そのため、学校に行きづらくなっている今の状態をどう感じているか聞いてみても、じっと黙り込んでしまったり、急に別の話をし始めたりすることがよくあります。相談員としては子どもの気持ちを知りたいという気持ちがあるのでいろんな質問を投げかけてしまうのですが、やはり子どもが自分の気持ちを言葉にする準備ができていなければ本当の気持ちを引き出すことはできず、そういう時に子どもから出てくる言葉はなぜかしっくりこないのです。
オンブズでは、子どもとの関係づくりを大事にしています。困っていることについて話をし続けるのは子どもにとってしんどいこともあり、一回の面談の中に雑談の時間や遊ぶ時間をとりながら子どもとの関係をつくっていきながら面談を重ねています。そうしているうちに、思いがけないタイミングで子どもからポロッと自分の気持ちが話し出されることがあります。相談員との話の何がきっかけになったのか、単に子どもの調子が良かった日だったのかは分かりませんが、ふとした瞬間に、まるで言葉の神が降りてきたかのように子どもから言葉が溢れてくるのです。子どもが自分の気持ちを話せるように様々な工夫をすることも大事ですが、一方で子どもの気持ちが言葉になるまで待つことも重要なことだと実感させられます。
今回、僕がコラムの神が降りてくるのを待っていたように、子どもも言葉の神が降りてくるのを待っているのかもしれません。そうであるなら、自分の気持ちを言葉になるまで待ってもらうことも子どものもつ権利で、横でただ一緒に言葉の神を待つというのは相談員ができることのひとつなんだと思います。
執筆:相談員 中村誠吾(せいくん)
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