子ども・オンブズコラム平成25年12月10日号
ページ番号1001715 更新日 平成30年3月8日 印刷
「中学生のころの小さな思い出」

オンブズの仕事をしていると、すっかり忘れていた、子どものころの出来事がよみがえってくる。子どもといろんな話をしていると、知らないうちにタイムスリップして、古い記憶の引き出しが開かれるようだ。あることをきっかけに、まわりのおとなの智恵にまもられたことを思い出した。
中学生のとき、だんだんやる気がなくなって、私は部活を途中でやめた。ふだんよりも早く家に帰ることになるのだが、それがいやで、友人数名と寄り道をすることになった。学校の終わった後に自由な時間があるなんて、メチャクチャ新鮮、と思ってたんだけど。文房具屋に行ったとき、店のおばあちゃんの目を盗んで、この友人たちが万引きした。あ~あ~こまったもの、見ちゃったよ。どうしたもんだか…先生に言う意気地もなくて、でも秘密にすることもできなくて、その時にいなかった別の友人に言ってしまった。そしたら、結局、先生の耳に入ることとなり、私は呼び出され、事情を聞かれた。
ひとしきり聞かれたあと、先生からこう言われた。「僕らは万引きの指導をしなくてはいけない。でも、なぜこのことが分かったかというときに、君の名前を出すわけにはいかないと思う」。実際、この友人たちに追い込まれて学校に来れなくなった子がいたから、先生は私にもその危険が及ぶのではと思ったようだ。先生はいったん持ち帰って考えた後、再び私に、店から学校に通報があったという形にすること、そして、もし友人たちから何か聞かれたら“先生が何でそのことを知ったのか、分からない”と答えるように、と言った。
私の心はかなり揺らいだが、最後は、先生を信じてみようと思った。たぶん、この先生とこれまでの関係も悪くなかったから、そう思ったのだろう。そしてちょっと面白いひとだった。
先生の読み通り、私がしんどい局面におかれることはなかった。先生にちくったといううわさも流れたが、いつの間にか静まった。
その後、この友人たちとは特にトラブルもなく、かといってものすごく仲良い状態でもなく、卒業を迎えた。別々の高校になり、たまに顔を合わせるとおしゃべりしていたが、その時は、こんな出来事があったことをお互いすっかり忘れていたように思う。
この対応が正しかったのかどうか、いろんな見方があるだろうし、他にもっといい方法があったのかもしれない。ただ、先生が日頃から私や友人を取り巻く人間関係をよく見ていて、そこから方法を考えてくれたことが大切だったと感じている。お互いの関係がこじれることのないように、けれど必要な関わりができるように、いろいろと考えてくれたのだと懐かしく思い出される。私の中には、まもられた感じが今もあり、この先生に対応してもらえてありがたかったなと、あらためて思う。
執筆:相談員・新林智子
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