子どもオンブズ・コラム平成27年10月号 「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2015」に出席して

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ページ番号1001693  更新日 平成31年1月24日 印刷 

「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2015」に出席して

川西市から報告している写真
写真:川西市オンブズから基調報告の様子

 2015年の「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム」が、2015年10月10日(土曜日)・11日(日曜日)に東京都西東京市で開催されました。
 全国の自治体関係者や研究者などが集まって開かれるこの自治体シンポジウムは、第1回目が川西市で2002年に開催されて以来、子どもに関わる施策を積極的に行っている自治体を開催地として毎年行われています。シンポジウムでは、全国の子ども施策に携わる自治体の人たちが出会い、交流し、意見を交換します。そして、参加者はそこで気づいたことやその場での議論をそれぞれの活動に還元していくことを目的としています。今年、川西市からは、浜田寿美男代表オンブズパーソン、事務局の藪野さん、相談員の平野が出席しました。

 この自治体シンポジウムに先立って、前日の10月9日(金曜日)には、「子どもの相談・救済に関する関係者会議2015」が行われました。この会議の趣旨は、全国の自治体から子どもの相談・救済に関わる実務者(オンブズパーソン・相談員・事務局担当者など)やこれから同様の制度を構築しようとしている自治体の関係者が集い、実際の活動、課題等を報告し合い、検討する中で、制度についての理解を深め、実践の質を高めることです。
 川西市のオンブズパーソンからは、「制度改善に向けた公的第三者機関の取り組みと実践的課題―川西市子どもの人権オンブズパーソンから―」という題で報告しました。オンブズワークとは、個別事案の「ケースワーク」の実施と「制度改善」への模索・推進の連動であり、そのバランスをどう考えるかが重要であることと、そこに潜む二つの危険性を提示しました。一つ目の危険性は、個別事案をめぐるケースワークに深入りしすぎて、状況の改善・制度改革への展望を見失ってしまうということ。もう一つは、事案の社会構造上の問題を指摘して、制度改善につなげようと意見表明しても、受け入れの素地がなければ空回りしてしまうということ。二つ目の危険性を避けるためには、ケースワークを丁寧に重ねていくことが重要なのですが、そこに終始してしまうと、結局一つ目の危険性に陥ってしまいます。このジレンマについて、実際の4事案をもとに報告しました。このような内容は、他の自治体でも共通の悩みであり、多くの参加者と議論を重ねることで、オンブズワークの可能性について理解が深まりました。

 自治体シンポジウム1日目の「全体会」では、「連携と協働による子ども支援・子育て支援―子どもにやさしいまちづくり―」をテーマに、先進的な取り組みを進めている4つの自治体からの報告が行われました。
 北海道芽室町で行われている発達障害の子どもの雇用創生事業、三重県名張市での子育てしたいまちづくり「ばりっ子すくすく計画」、大阪府豊中市の社会全体で子どもを育む環境づくりを進めるための取り組み、東京都西東京市における「西東京市子育ち・子育てワイワイプラン」。どの自治体からの発表も特色ある取り組みで、大変刺激を受けました。全体を通して感じたことは、子ども支援・子育て支援は、決して子どもや親だけを支援することではなく、その地域社会をどうつくっていくかにつながっているということです。
 さらに、そのあとに行われた、「ヨーロッパ子どもにやさしいまちネットワーク」代表のヤン・ファン・ヒルスさんの特別講演で強調されていたメッセージも、「子どもにとってよりよいまちは、すべての人にとってよりよいまち」というもので、子ども施策を子どもを含めた社会の問題として捉えることの重要性を再認識しました。

 シンポジウム2日目の「分科会」は、7つの異なるテーマに分かれて開催され、私たちは「子どもの居場所」分科会に参加しました。今年の「子どもの居場所」分科会のテーマは、「『困難を有する子ども』の居場所づくり」です。貧困問題の悪化、失業や雇用の不安定化など、子ども・若者の社会的排除・周辺化が進行している状況のなかで、自分も他人も信頼することができず、人生をあきらめている子どもが増えていること、そのような子どもや若者の権利を保障し、目標や意欲をもって生きていけるための居場所づくりが急務であること、学校でも家庭でもない「第三の居場所」「ナナメの関係」の意義について、4つのNPOからの発表をもとに議論がなされました。
 報告のなかで印象に残ったのは、地域のなかに子どもの居場所をつくり出していくことで子どものSOSを発見できる機会が増えていくということです。神奈川県立田奈高校内で「ぴっかりカフェ」を運営している石井正宏さんは、その報告のなかで、「子どもは本当に困っていることをなかなか人に相談できないもの。本当にしんどい状況に生きている子どもは不安を漠然としたカタマリでしか感じることができなくて、何をどう相談していいかわからない。だから、その不安のカタマリを明確なことばにして表現できるようにしていくこと、そこから始めなくてはいけない」と言われます。そして、石井さんは「信頼貯金をためる」ということばで、カフェの出会いの中で少しずつ子どもからの信頼を得ること、そしてそれが十分にたまったとき、初めて子どもは自分の困っていることを話してくれるのだとおっしゃっていました。オンブズの活動と立場や方法は違っても、同じスタンスであることを感じ、とても心強く思いました。
 今回の関係者会議、自治体シンポジウムの出席を通して、全国の子ども支援に携わる方々に出会い、ともに議論し、様々な報告をきかせていただいたことは、大変貴重な機会となりました。この経験を、今後の日々の取り組みに活かしていきたいと思います。

執筆:相談員・平野 裕子(ひらりん)

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