子どもオンブズ・コラム平成28年7月号 おかあさんといっしょ?

このページの情報をツイッターでツイートできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページ番号1001685  更新日 平成30年8月3日 印刷 

おかあさんといっしょ?

堀家オンブズの似顔絵
似顔絵:堀家オンブズパーソン

 自己紹介でも書いたのですが、私はごく最近になって「お母さん」になりました。いまは3歳の女の子を必死で育てています。初めて「子育て」というものにたずさわって、日々いろんな発見があります。そして、いま一番強く思っていることは、「この国で子育てをする“お母さん”とは、何と大変な生き物なんだ!」ということです。
他の国のことはよくわかりませんが、この国はとにかく「子育ての主たる担い手は母親である」というプレッシャーが非常に大きいと感じます。たとえば、育児グッズのひとつに「お尻ふき」というものがあります。私は、某赤ちゃんグッズメーカーのお尻ふきを愛用しているのですが、そのパッケージをよく見ると、「全国のお母さんを応援します」と書かれているのです。別の某有名オムツにも「ママとキッズの応援団!」というようなことが書かれています。
 こうしたメッセージを見て元気をもらえるお母さんも多いのでしょうが、私などは少々ひねくれ者ですので、「なんでオカンばっかりやねん!オトンはどうした?お爺、お婆はどうした?」と思ってしまいます。父親が子育てに参加すれば、「イクメン」ともてはやされますが、母親が子育てをしても誰も称賛してはくれません。
 私の個人的な思いですが、誰に何を言われなくても、母親は日々子育てのプレッシャーを受けています。子どもがけがをすれば自分の不注意だったのではないかと後悔し、子どもが熱を出せば「何が悪かったのか」と自分のなかに原因を探そうとします。頭では「そんなに母親ばかり頑張らなくてよい」とわかっていますが、どうしてもそんなふうに考えてしまいます。そこにもってきて、日々の育児グッズからもプレッシャーを受けるわけです。私のストレス、いや全国の母親が抱えるストレス、みなさんに少しわかっていただけたでしょうか?
 ここまで愚痴ばかり書いてきましたが、もちろん、子育ての楽しみもあります。今私が一番関心を持って見守っているのが、子どもが獲得する「ことば」についてです。言葉といえば、学校では、はじめにひらがなを習い、次にカタカナ、そしてやさしい漢字から難しい熟語の学習という順番で勉強していきます。しかし、生活の場面ではそうではありません。子どもは、環境と折り合いをつけながらその状況(文脈)のなかで成長していくのであり、言葉の学習もそうです。
 ある日娘と保育園に行くと、先に来ていたお友達が近づいてきました。「Aちゃん(私の子どものこと)、かわいいキャミソール着てるね!」とその子が言いました。私はびっくりして、「あら、そんな難しい言葉知ってるの?すごいね!」と言いました。夕方になって帰宅した娘が、自分の着ているものを指さして言いました。「Aちゃんもこれの名前知ってるよ。えっとね、えっとね…フキソウジ!」キャミソールとふきそうじ…似ても似つかぬ単語です。しかし、自分も「すごいね!」と言ってもらいたかったのでしょう。記憶の奥から「何となく音の似ている、自分が知っていることば」を探し出したのだと思いました。言葉を学ぶときにはこんな学習の仕方もあるのだと、私なりの新しい発見でした。
 また別の時のことです。3歳にもなると食べるものも一人前で、そうすれば「出るもの」も一人前になってきます。抱っこをしていた時のこと、強烈な一発をお見舞いされました。私は「ちょっと!くさい!自分で責任とってよ!」と言って、手をうちわのようにパタパタさせ、その強烈なにおいのする空気を娘の顔の前に持っていきました。彼女はケラケラと笑っていましたが、ある時、リビングであぐらをかき、夢中で手をパタパタさせている娘を見ました。私が「何してるの?」と聞くと、彼女は必死の形相で言いました。「セキニンとってるの!」。まだひらがなもカタカナも読み書きできませんが、「責任」という熟語(とその使い方)はどうやら知っているようです。こうしたエピソードを見てみても、子どもという生き物はその持てる身体で外の世界と折り合いをつけ、まさしく「自分で責任をとって」生きているのだなあと感心します。
 さて、タイトルに付けた「おかあさんといっしょ」ですが、みなさんご存じの幼児番組のタイトルでもあります。子どもができて、生まれて初めてこの番組をじっくり見る機会をえました。歌、手遊び、体操などに加え、毎回キャラクターが登場して小さな物語が展開されます。今年度からキャラクターが変わり、個人的にはそのことが残念で仕方がありません。というのも、昨年度までのキャラクター設定が非常に興味深いものだったからです。キャラクターは3人、ひとりはやんちゃな男の子ですが、家は銭湯をしていて、恐い「おばあちゃんと2人暮らし」です。もうひとりは「名門」の生まれの男の子らしいのですが、他の2人にそのことは全く考慮されません。また、しゃべり方や趣味がいわゆる「男の子らしい」ものではないことで、時々2人にいじられたりもしています。そして、3人目。見かけはリボンやヒラヒラしたものに包まれている「ザ・女の子」なのですが、実は他の2人より強い女の子であり、いわゆる「フツーの家庭の子」です。このように、個々もユニークであり、その「背景」も多様な仲良し3人組が色々な事件に巻き込まれていくという設定の在り方に、私はとても魅力を感じていました。しかし、今年度からのキャラクターは「赤い服を着たウサギの女の子」と「青い服を着たオオカミの男の子」、そして無機質な「ロボット」のトリオです。もちろん、前回のように意図した設定があるのでしょうが、今のところ前回ほどのおもしろさは感じられません。
 またまた愚痴になってしまいましたが、先日この番組を一緒にみていた私の母がポツリと言いました。「私もこの番組によう助けてもらったわ」。
 そうです。この番組は、ちょうど朝の支度が忙しい時間帯にあります。親がみていなくても、子どもは画面にかぶりつきで観ています。「おかあさんといっしょ」というタイトルは、「(子育ての主たる担い手である)おかあさんが子どもさんと一緒になって、歌や体操をしてあげてくださいね」というような、先の育児プレッシャーの話と捉えることもできるのですが、他方で、「働く親も専業主婦も忙しい、そうしたお母さんと“ともに”育児をしましょう」という意味での「おかあさんといっしょ」でもあるのではないか。いや、テレビ側の意図はわからないけど、そう考えたらいいやん!
 そんなふうに思えるようになってきた私自身、子育てにまつわる様々な状況とある程度折り合いがつけられるようになり、自分の身体を持ってセキニンがとれるようになってきたのかもしれません。

(注)母親が抱える育児プレッシャーについては、本田由紀さんという方が「家庭教育の隘路 子育てに脅迫される母親たち」という本のなかで様々に「検証」されています。少し難しい言葉も出てきますが、子育てに悩むお母さんにオススメです。

執筆:オンブズパーソン・堀家由妃代(ほりけゆきよ)

より良いウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。

質問1:このページは分かりやすかったですか?
質問2:質問1で(2)(3)と回答されたかたは、理由をお聞かせください。(複数回答可)


 (注)個人情報・返信を要する内容は記入しないでください。
所管課への問い合わせについては下の「このページに関するお問い合わせ」へ。

このページに関するお問い合わせ

子どもの人権オンブズパーソン事務局

〒666-8501 川西市中央町12番1号 市役所5階
電話:072-740-1235 ファクス:072-740-1233
子どもの人権オンブズパーソン事務局へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。