子どもオンブズ・コラム令和2年7月号 「未成年後見人」を知っていますか

このページの情報をツイッターでツイートできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページ番号1011405  更新日 令和2年7月13日 印刷 

「未成年後見人」を知っていますか

イラスト
 三木オンブズパーソンのイラスト

 私は、日ごろ弁護士として働いています。
 「未成年後見人」は、弁護士としての仕事の一つです。
 「未成年後見人」には、家庭裁判所から選ばれて就任します。
 「未成年後見人」は、簡単にいうと、両親が死んでしまったとか、いなくなってしまった子どもたちの親代わりです。
 こうした子どもたちは、施設に入っているとか、親戚に預けられていることが多く、割合としては、第三者である弁護士ではなく、その施設の長や親戚が「未成年後見人」に選ばれるほうが多いのですが、家庭裁判所がそうした子どもたちの最善の利益のために特に必要と認めたときに、弁護士に「未成年後見人」の依頼をしています。
 私は、弁護士としての仕事を25年以上続けてきましたが、その中で「未成年後見人」を務めた子どもが複数人います。親代わりですから、彼ら、彼女らとの思い出はいろいろとあります。
 ある子は、少し道を踏み外して「悪さ」をするようになり、その後始末に奔走したこともありました。生々しい話ですが、被害を与えてしまった方との示談交渉をしたり、弁償するお金を立て替えたり、そうした支出に備えて予め賠償責任保険というものに加入したり。そんな彼女も、今は立派に立ち直って、大人になり、笑い話になってしまっていますが、当時はもう冷や冷やものでした。
 別の子は、両親との離別を大変に悲しい(一生トラウマとして背負わなければならないような)形で迎えることとなってしまい、その後預けられた親戚からも大切に扱われない日々を送っていました。そこから救い出してくれたのが、彼が通う高校の先生でした。私とその先生は昔からの知り合いで、彼がたまらず親戚の家から家出した夜に「こいつのために力になってやってくれ!」と、その先生が会わせてくれたのが彼との初めての出会いでした。あれからもう10年近くが経とうとしています。彼が就職してから、これまた生々しい話ですが、職場があまりにブラックで、残業代の請求をしたり、交際相手から相談にまで乗ったりと、忘れられないことばかりです(今でも年に数回食事をしています)。
 また別の子は、両親が相次いで病気、事故で亡くなり、伯母さんに預けられていました。私が「未成年後見人」に選ばれたのは、主に彼女が両親から相続した財産の管理を行うためでした。彼女は、本当に幸いなことに、その伯母さんからすごく愛されて育ちました。伯母さんには3人の娘がいますが、その3人とも本当の姉妹(彼女が「末っ子」)のように育ちました。
 「未成年後見人」は子どもが成人するまで続くのが普通ですが、この件は違う終わり方をしました。彼女の高校進学を機に、伯母さんが彼女の本当の親になる、つまり彼女を伯母さんの養子にするという決断をし、家庭裁判所に養子縁組の申立を行ったのです。
 私が「未成年後見人」として関与していた5年超に渡り、彼女の養育環境を見守ってきた経験からしても、伯母さんの彼女に対する愛情は本物と感じられるもので、心から祝福しました。何より、彼女自身が強く望み、伯母さんも姉妹もともに強く望んでのものでした。このときのことを思い出すと、今でも胸が熱くなります。裁判所としては、異例の取扱なので、なかなか事が運ばなかったのですが、愛情の絆はそれも凌駕し、最後には、担当してくれた裁判所関係者からも祝福の言葉をもらいました。
 社会には、こうした親がいない子どもがたくさんいます。でも、彼ら、彼女らは「恵まれない」子たちなのでしょうか。両親がいなければ周囲の大人が、周囲の大人に期待できないなら社会全体で、彼ら、彼女らの育ちを支えていくことはできるのではないでしょうか。彼ら、彼女らを「恵まれない」子と呼ぶかどうかは、私たち社会の問題ではないかと、私はこの「未成年後見人」の仕事を通じて強く感じています。川西市子どもの人権オンブズパーソンとしての仕事も、同じように、子どもの最善の利益のために力を尽くせるものとして、楽しみながら、ときに苦しみながら、日々やらせていただいています。これからも、どうぞよろしくお願いします。

執筆:オンブズパーソン・三木憲明(みき のりあき)
 

より良いウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。

質問1:このページは分かりやすかったですか?
質問2:質問1で(2)(3)と回答されたかたは、理由をお聞かせください。(複数回答可)


 (注)個人情報・返信を要する内容は記入しないでください。
所管課への問い合わせについては下の「このページに関するお問い合わせ」へ。

このページに関するお問い合わせ

子どもの人権オンブズパーソン事務局

〒666-8501 川西市中央町12番1号 市役所5階
電話:072-740-1235 ファクス:072-740-1233
子どもの人権オンブズパーソン事務局へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。