子どもオンブズ・コラム平成27年1月号 「自分のペースで、すこしずつ」
ページ番号1001702 更新日 平成30年3月8日 印刷
「自分のペースで、すこしずつ」(船越相談員)

わたしはスポーツを見ることが好きです。中でもフィギュアスケートは、2006年のトリノオリンピックからずっと見つづけている、大好きなスポーツのひとつです。運動オンチのわたしからすると、氷の上で「すべれる」だけでもすごい!と思うのに(わたしは「歩く」のがせいいっぱいです……)、それがくるくる回ったり、跳んだりするものだから、はじめて見たときに感動して、ぐーっとひきつけられました。ルールで制限がある中でも、選手たちはそれぞれの個性を出していて、とてもうつくしくて、楽しくて、ほんとうに「きらきらした世界」で、あこがれたのをよく覚えています。
けれどこれほど好きなのに、フィギュアスケートは、そしてその選手たちは、もうずいぶん長く、わたしにとって、あこがれてはいるけれど現実ではない、とても遠い世界にある存在でした。なんだか才能にあふれた、特別なひとたちで、わたしとはまったく違う人間のように感じていたのです。けれどある時、応援しているある選手のインタビュー記事で、「やるべきことをやって、一生けんめい努力もしているのに、前に進めない」ということばを見て、ああ、これはとてもわかるな、と思ったのです。
がんばっている。ひとより……と言えるかどうかはわからないけど、とにかく自分なりのせいいっぱいは、尽くしている。でも、うまくいかない。やり方が間違っているのかもしれない。でも、いろいろ試したり、アドバイスをもらっても、どうしてもうまくいかない。ちっとも前に進めない。もういっそ、わたしじゃなくてあのひとだったらうまくいくのに、なんて、どうしようもないことを考えたりする。だけどこれはわたし自身の問題だから、わたしがなんとかするしかない。それはとてもよくわかっている。わかっているけれど、わかっているからこそ、がんばってもうまくいかないことが、すごく、苦しい。
わたしはちっとも要領がよくないし、どちらかというと不器用なほうなので、こんな迷路に迷いこんでしまうことが、とてもよくあります。そんなときは、がんばること自体が無意味に思えてしまったり、自分ってほんとにダメだな、と思ってしまったり、放っておくと、どんどん沈んでしまうのです。
でも、あんなに遠く、きらきらして、才能にあふれているように見えた選手たちも、わたしと同じようにうまくいかなくて悩んだり、落ち込んだりすることもある。そんな中で、がんばっている。だったら、わたしだって、そんなにダメじゃないのかも。もうすこし、やれるのかもしれない。先ほどの選手のことばを知って、そんなふうに思うようになりました。
そして、(あんまり自信はないから、小さな心の声で)ひょっとして……とも、思うのです。ひょっとして、わたしのがんばりも、わたしの知らないところで、だれかの支えになっているのかも。だったら、うまくいかなかったがんばりも、無駄じゃなかったのかも、と。
そんなふうに思えるようになってから、すこし力が抜けて、うまくいかないときにはえいや!と思い切って、どっぷりお休みするようになりました。好きな映画をみたり、趣味のものづくりをしたり、うーんと寝たり。うまくいかないときは、そんなふうにお休みすることをいけないことだと思ってしまったり、焦ったりしてしまうこともあるけれど、でも、お休みだってとても大切です。すこしずつためていった「楽しい」や「うれしい」は、新しいなにかにつながっているかもしれない。ゆっくりお休みして、こころにゆとりができると、そこにあった、でも今まで気づかなかったなにかを大切だと思えるようになるかもしれない。そんな可能性がたくさんある時間なのです。
がんばってもうまくいかないことは、この先もきっとたくさんある。でも、がんばったことって、無駄じゃない。もしかすると、あなたの知らないうちに、だれかがあなたのがんばりにはげまされたり、支えられたりしているかもしれない。そんなふうに考えて、自分のペースですこしずつ、たくさんの「楽しい」や「うれしい」を拾いながら歩くのも、悪くないんじゃないかな、と思うのです。
執筆:相談員・船越愛絵(まなてぃ)
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