子どもオンブズ・コラム 令和5年11月号 「あおみどり」の魅力

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ページ番号1018613  更新日 令和5年12月5日 印刷 

「あおみどり」の魅力

イラスト
中村相談員のイラスト

 僕はアクリル絵の具で絵を描くのが好きなのですが、何枚も描くうちに自分のある癖に気付きました。それは、いろんな色の絵の具がある中で「あおみどり」をよく使う、ということです。悪いことではないのでしょうが、気を抜くとすぐに「あおみどり」を使ってしまいます。あの青とも緑とも言えない、なんともオリジナルな色味が好きなんだと思います。

 唐突ですが、みなさんは「あおみどり」は青色のグループに入るのか緑色のグループに入るのか、どちらだと思いますか?直観的に「青」と答えたり「緑」と答えてくれる人もいたり、けっこう意見が分かれるのではないかと思います。僕自身、これまで友だちの何人かにこの質問を実際にしてきました。ある人は「あおみどりっていう名前で最初に『あお』が入っているんだから青色じゃない?」と言ったり、その逆で「名前の最後が『みどり』なんだから緑色の一種だ」と言う人もいました。なかには他の色を例にとって「『きみどり』は黄色のグループじゃなく緑色のグループだから、それと同じで『あおみどり』は青ではなく緑だ」と、それっぽい答えを言ってくれる友だちもいました。

 ネットなどで「あおみどり」を調べてみると「青と緑の中間色である」というなんともどっちつかずで曖昧な表現のことが多く、青であるとも緑であるとも記載されていないことが多いのです。ちなみに「きみどり」は「黄みがかった緑である」と記載されていることが多く、黄色というよりも緑色の一種だと直感的に認識している人の方が多いのではないのでしょうか。僕が調べた限りでは「あおみどり」はあくまで青と緑の間で、青と緑のどちらでもないことが重要なようです。このような「どちらでもない」「曖昧な」ものとは、趣味で絵を描いている時だけでなく、相談員として子どもの話を聞いている時にも出会うことがあります。

 オンブズでは「子どもの声をきく」こと「子どもの気持ちをきく」ことを大切にしています。その背景には、子どもの直面している問題に対しておとなの視点で問題解決を図るのではなく、子どもの視点で問題を解決していくことがオンブズの役割である、という考えがあります。子どもが日々関わっている保護者や友だち、学校の先生にはなかなか言えないことも第三者のオンブズには話をすることができる、そこにオンブズという機関の意義があると僕自身も考えています。オンブズに携わる者としては、相談にくる子どもが周りにはなかなか言えない本当の気持ちを言ってもらいたい、言ってもらえるような関係を築きたいと願っています。

 子どもの視点で問題を解決していくにあたっては、どうしても「本当の」子どもの気持ちが知りたくなります。それは、子どもの不本意な形で、つまりはおとなの視点で問題が解決されることをどうにか避けたいと思うからです。ただし、その際に、子どもには「本当の」気持ちがあるはずだという前提を無意識にもってしまっている可能性には注意が必要なのだと思います。子どもの気持ちはアボカドの種のように割れば芯の部分に「本当の」部分が見つかることもあれば、玉ねぎのように剥いても種なんてないこともあるのではないでしょうか。おとなでも家庭での自分と職場での自分、友人といる時の自分は少しずつ違っていて、時間や場所で変化するもので、どれが本当の自分かと聞かれても答えに困ります。であるならば、むしろ玉ねぎのように、いま剥き出しになっている面で子どももおとなも生きている、という方が現実味があると思うのです。

 子どもが直面している、抱えている問題の解決にあたって、子どもには「本当の」声や気持ちがあるはずだと思い込み、「子どもの声をきく」こと「子どもの気持ちをきく」ことを優先しすぎるのもまた、おとなの視点で問題解決を目指してしまっているのかもしれません。どっちつかずで曖昧なことはネガティブなイメージをもたれがちですが、「あおみどり」のように青とも緑とも言えない、曖昧な部分にこそ魅力があったりもします。子どものもっている気持ちも決して一つの単語で表現できるものばかりではなく、ある気持ちとある気持ちの間だったり、いくつかの気持ちが混ざり合って、子どもの声はできているのではないでしょうか。

 「あおみどり」に、「本当は青なのかい?緑なのかい?」と聞いても「あおみどり」はただただ困ると思いますが、周りから見て何色に見えるのかを話し合うのはきっと重要なのだと思います。オンブズの相談員として、時間や場面で変化する子どもの気持ちや、子どもの曖昧な気持ちそのものを受け止め、子どもの声をもとにみんなで話し合いながら問題解決に携わりたいと思います。また、このコラムを書くことを通して「あおみどり」の曖昧さにこそ惹かれている自分に気づくことができました。当分は絵を描く時に「あおみどり」を使いそうです。

執筆:相談員 中村誠吾(せいくん)

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