子どもオンブズ・コラム 令和6年3月号 「『地方自治体と子ども施策』全国自治体シンポジウム2023」に参加して ~オンブズパーソン相談員1年生の「もがき」と「きづき」~

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ページ番号1019286  更新日 令和6年3月25日 印刷 

「『地方自治体と子ども施策』全国自治体シンポジウム2023」に参加して ~オンブズパーソン相談員1年生の「もがき」と「きづき」~

李相談員
李相談員 イラスト

 「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム」が2月10日(土曜日)・11日(日曜日)に、そして「子どもの相談・救済に関する関係者会議」が2月12日(月曜日)に、東京都小金井市で開催されました。シンポジウムおよび関係者会議の目的は、子ども施策についての情報交換・経験交換を行うこと、子ども施策に関する研修の機会を提供すること、関係者同士のネットワークを構築することです。川西市からは長瀬オンブズ、渡邊オンブズ、浜田オンブズ、そして相談員の李(筆者)が出席しました。以下では、私がシンポジウム・関係者会議に初めて参加して感じたことを書きたいと思います。

  ~オンブズパーソン相談員1年生の「もがき」~
 私は今まで、教師として学校で働いたり、心理士としてクリニックで働いたことがあります。「教師」と聞くと、今まで出会ったり映画やドラマでみたりした先生のなかから、黒板の前で勉強を教える人、部活を指導する人などを思い浮かべられるでしょう。「心理士」と聞くと、クリニックへ行ったことのない方でも「悩みを聞く人なんだろうな」とだいたい想像がつくと思います。このように想像できるのは、学校やクリニックが社会に定着しているからではないでしょうか。そのため、私が教師として、また心理士として働く際、それぞれの職業的な役割を理解するのは、それほど難しいことではありませんでした。
 それに比べ、オンブズパーソンに関しては、設置されている自治体の数が限られているということもあり、社会に広く認知されているとは残念ながら言いがたいでしょう。教師も心理士もオンブズの相談員も対人援助職に含まれ、一人ひとり個性のある人間を相手にする仕事という点では一緒です。その都度、臨機応変な対応が求められることは似ているはずなのに、私は、オンブズの相談員として、何を期待されて、どのように動けばよいのかが、いまいちつかめずにいました。
 4月から川西市の「子どもの人権オンブズパーソン」で働くことになり、オンブズ制度について書籍や実践を通して学んできましたが、十分に理解しているのかと問われると、自信をもって頷けないところがありました。「オンブズ制度は『個別救済』から『制度改善』に繋げられることが魅力なんだ」と制度に関する説明はできても、それは頭で理解しただけで、実感を伴わない、どこか虚しい言葉でした。「個別救済」の大部分は子どもの相談にのるところから始まるもので、その点、具体的な場面を想像しやすいですし、相談員として子どもの話を聴いていると「個別救済しているかも…」という感覚になります。一方「制度改善」については、正直なところ十分に理解できていませんでした。いつしか自分がよく理解できていない「制度改善」という視点を片隅におき、自分の少ない知識と経験をどうにか活かして子どもの話を聴こうとしていました。オンブズ制度において「個別救済」と「制度改善」が、どのように繋がっているのかを理解できていなければ、目の前の子どもの実情に合わせて臨機応変に対応することは難しく、その点、私がオンブズの相談員として働くことに難しさを感じていたのだと思います。

 ~オンブズパーソン相談員1年生の「きづき」~
 そんなもがいていた私へ、シンポジウムと関係者会議に参加する機会が訪れました。参加してみて、学んだことが大きく2つあります。「学んだ」というほど大げさなものでもありませんので、オンブズパーソン相談員1年生なりにきづたいことをつぶやいているのだと思っていただけると幸いです。
 1つ目は「子どもにやさしいまち」づくりが、なぜ最近、注目されているのか理解できたことです。
 「子どもにやさしいまち」づくりは、川西市子どもの人権オンブズパーソン2023年次報告会のテーマにもなっています。1日目の全体大会で、千葉県流山市の竹中さん(流山市こども家庭部長)が言われていた「子どもにとってやさしいまちとは、住む人みんなにとってもやさしいまちだ」という言葉に、私は深く共感しました。オンブズは、子どもの声を聴くことを大事にしていますが、子どもの声を聴くことはオンブズに限ったことでなく、子どもに関わる全てのおとなが大切にするべきことです。しかし、子どもと関わる保護者や教師は忙しい場合が多く、おとなが余裕をもって子どもの話を聴く時間をとることが難しいのではないでしょうか。子どもの周りにいるおとなにとって住みやすいまちは、子どもにとっても住みやすいまちであり、その逆も同じなのかもしれないと思いました。
 2つ目は、私が片隅においていた「制度改善」について理解が深まったことです。
 3日目の関係者会議で、名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」の権利擁護委員である間宮さん(弁護士)が「制度改善のための提言等について」という基調報告をされていました。その報告で印象的だったのは「より多くの子どもたちを救うためには、制度改善が必要ではないか?」という問題提起です。もし、相談案件で表れる個人の困りごとや悩みの根本的な原因が、実は個人の問題でなく、社会構造や社会制度に問題があったとしたら、どうでしょうか。社会的な制度という大きな枠組みの方を改善しなければ、同じような問題が繰り返されるだけでしょう。今まで何度も聞いたことのあることでしたが、制度改善によって、より多くの子どもを救える可能性が開かれるのだという話を聞き、腑に落ちたような、自分のなかで「個別救済」と「制度改善」が緩やかに繋がったような感覚になりました。

 シンポジウムに参加してきづいたことを、頭のなかでぐるぐる考えていると「オンブズパーソンの強みは、子どもの声を制度改善に繋げることであり、子どもの声を制度改善に繋げるためには、子どもの声を聴く環境が大事で、その環境とは『子どもにやさしいまち』であり、『子どもにやさしいまち』とは、みんなにとってもやさしいまちである…のかな?」と、なんとなく繋がっていきました。オンブズパーソン制度について、まだまだわからないことはありますが、シンポジウム・関係者会議に参加する前に比べると、少しだけ理解が深まったような気がします。また、今回、他の自治体の実務者(オンブズパーソン・相談員など)の人たちと交流させてもらう機会を得て「ひとりじゃないんだ」という感覚をもてたことも、オンブズパーソン相談員としての私の不安を軽くしてくれました。

 執筆 相談員 李  美蘭

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