子どもオンブズ・コラム令和2年9月 子どもが孤立しないために

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ページ番号1011743  更新日 令和2年9月28日 印刷 

子どもが孤立しないために

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  大久保相談員のイラスト

 オンブズで子どもたちとかかわっていると、ふと昔のことを思い出すことがあります。その中でも、高校時代は忘れられない過去の一つです。
 私は、地元を離れたいという気持ちが強く、大学進学はそれを果たせるチャンスだと企んでいました。けれども、受験や学費にはそれなりの資金が必要です。決して裕福ではない家庭で生まれ育った私は、まずお金が必要だと思い、高校入学と同時にアルバイトを始めました。
 ところが通っていた学校は文武両道を掲げ、勉強と部活動が第一だという価値観が絶対的でした。なので、部活動に入らずその時間をお金に変えることはタブー視されており、肩身が狭い思いをしていました。担任の先生にも、懇談の度にアルバイトを辞めるよう言われ続け、進路希望の用紙を提出した際には「他の大学を知らないのか?大学をきちんと調べろ」というように叱られてきました。私としては、自分なりに志望校をたくさん調べて考え、進学するためのプランを立て、行動してきたつもりだったので、担任の先生の言葉に対してついムキになり、他の志望校を考えず、バイトも辞めずに続けました。そうはいっても、放課後遅い時間まで働いて翌朝いつも通りに学校に行くのは、体力的にキツイものがあります。すると授業中も眠気に勝てなくなることも増え、学力も思うように伸びません。模試の結果が目標に全く届かず、担任の先生だけではなく親にも地元の受かるレベルの大学を受けるよう言われるようになります。次第に、どうやって志望校を変えずにうまくいくか、先生にも親にもなかなか相談できなくなってしまいました。そのままでは資金調達どころか大学に合格できず、地元を脱出する計画が全て台無しになってしまう危機でした。
 そうした中、バイト先で出会った人にはとても救われました。働くスタッフの中では一番若かったのですが、先輩に将来の相談をした時には「自分の考えがしっかりあってすごい」と私の考えを尊重するように話を聞いてくれました。また、地元を離れた大学を卒業した店長は、「自分は四浪したから1回くらい失敗しても大丈夫」と言いながらも、シフトが多くなりすぎていないか、受験勉強の調子はどうかといつも気にかけてくれていました。このように、自分を認めてくれているようなおとなの存在はとても心強いものでした。先生や親に対しては突っ張っていても、不思議とバイト先の人には不安や心配も素直に話すことができ、励ましてもらいました。気持ちが揺らぎそうな時、バイトに行ったおかげで気が晴れるといったこともよくありました。
 こうしてふりかえってみると、周りのおとなを頼れずに、反対されながら子どもが一人で悩み葛藤し続けるというのは、とてもしんどいものです。そんな中、自分の意見を尊重して耳を傾けてくれる人はとても支えになりました。誰か周りのおとなが話を聞いてくれたり、味方になって応援してくれたりした時はとても気持ちが楽になりますし、頑張ろうとする気持ちを取り戻すことができます。
 子どもたちの話を聞いている中で、おとなに対する不信感を感じると、とても心が痛む気持ちになります。ほんとうは誰かに頼りたいのに、頼れない。頼ろうと勇気を出して相談したけれども、話をしっかり聞いてもらえず、かえって自分の考えを否定されるようなことばかり言われてしまった。そうした経験を積み重ねると、つい一人で抱え込んでしまいがちになります。そのまま周りを押し切って一人で突き進んでしまうと、今度は何かあった時に周囲に助けを求めにくくなります。ちょっとしたことでさえ聞きづらくなったりします。そうなってしまうと、どんどん自分自身が追い込まれてゆきます。
 そうなる前に、誰か一人でも子どもの意見に耳を傾けてかかわってくれるおとながいてくれたらと思うのです。それは、家族なのか、学校の先生なのか、地域でかかわっている人なのか、それともオンブズなのかはわかりません。子どもにとって、おとなに認めてもらえているという感覚は前に進むためのエネルギーになります。私自身一人のおとなとして、まずは子どもの話にしっかりと耳を傾けることを大切に、尽力していきたいと思っています。

執筆:相談員・大久保 遥(はるたん)
 

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