子どもオンブズ・コラム平成30年10月号 『じぶんだけのいろ』

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ページ番号1007701  更新日 平成30年10月22日 印刷 

『じぶんだけのいろ』

イラスト
     鈴木相談員のイラスト

 『スイミー』で有名な絵本作家レオ=レオニの展覧会に足を運ぶ機会があり、そこでいくつかの作品に触れました。『フレデリック』、『チコときんいろのつばさ』、『コーネリアス』など、どれも素敵な作品なのですが、その中でも、『じぶんだけのいろ―いろいろさがしたカメレオンの話』という絵本がとても印象的だったので紹介したいと思います。
 主人公のカメレオンはある悩みを抱えています。オウムはみどり、金魚は赤、象は灰色、豚は桃色と、動物はみんな自分の色があるのに、カメレオンの自分だけは行く先々で色が変わってしまう。どうしたらいいのだろうか…。
 悩んだカメレオンは、それならば、木の葉のうえでずっと生活していれば、緑色を自分の色にできるかもしれない、と考えました。緑色の木の葉に飛び乗ったカメレオンは、目論見通り、きれいな緑色になりました。カメレオンはとても嬉しくなりました。しかし、幸せは長くは続きません。木の葉は秋になると、黄色に変わり、赤色に変わり、カメレオンも緑から黄色、黄色から赤色と、色が変わってしまいます。喜びでクルクルと上に丸まっていたカメレオンの尻尾は、段々と下に垂れてきて、目はうつむいて、口もへの字になって、浮き浮きとしていた表情が陰りを帯びてきます。さらに冬になると、木の葉は寒風で枝から吹き飛ばされて、木の葉にのっていたカメレオンも地面に落ちてしまいます。長い冬のあいだ、黒い地面と同じように、カメレオンの色も気分も真っ黒です。
 春になって、カメレオンは草むらで一匹のカメレオンと出会います。カメレオンは思い立って、「ぼくらは、どうしても自分の色を持てないのだろうか?」と自分の悩みを話してみました。すると、もう一匹のカメレオンは、「残念だけどね」とつれなく答えを返しました。けれども、つづけて、「でも、ぼくら、一緒にいてみないか」と誘うのでした。一緒にいれば、行く先々で色が変わっても二匹とも同じ色だから、と。二匹のカメレオンはその後、一緒に暮らすことになりました。二匹は一緒に、緑、紫、黄色、水玉模様に変わりました。悩んでいたカメレオンの顔が穏やかで幸せな表情に変わり、物語は閉じられます。
 はじめてこの絵本を読んだ時、自分だけの色がほしいと悩んでいたカメレオンが、いろいろと探し試みた結果、色を探すのをやめてしまう結末に驚きました。悩むカメレオンの姿に、自分だけの色=自分の個性を探し求めていたかつての私を重ねていたからです。
 では、なぜカメレオンは自分だけの色探しをやめたのかといえば、もう一匹のカメレオンとの出会いがあったからです。私が、何よりもドキリとさせられたのは、カメレオンの相談に対するもう一匹のカメレオンの応え方でした。「残念だけどね」という返事を、はじめはすこし冷たく感じました。思い悩んでいたカメレオンに、自分だけの色を探すのをきっぱり諦めるように聞こえるからです。しかし、よく考えてみると、カメレオンは生き物として、色を変えることをやめられないのですから、とても現実的な答えです。聞いたカメレオンはハッとさせられたのかもしれません。
 しかも、もう一匹のカメレオンは、現実的な答えで突き放すだけでなく、「一緒にいてみないか」と誘うことでカメレオンの悩みに寄り添おうとします。長い時間をかけて、一緒に色を変えていく中で、「くるくると色が変わるのが君の色(個性)だよ」というメッセージをもう一匹のカメレオンは伝えたかったのではないでしょうか。絵本には描かれていませんが、その時々の色について、二匹は多くの言葉を交わしたのかもしれません。
 私も、オンブズの相談員として、子どもの困っていることについて、子どもに寄り添いながら、ともに悩み、考えていけるおとなでありたいと思います。

執筆:相談員・鈴木伸尚(すーくん)
 

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