広報かわにしmilife(みらいふ)2020年3月号K-Culture
ページ番号1010072 更新日 令和2年2月27日 印刷
パラクライミング世界選手権 銀メダリスト 大内秀之さん
プロフィール
川西市出身の40歳。生まれてすぐ脊髄に悪性腫瘍があることが判明し、摘出手術を受けるも左腎に転移し摘出。2度の大きな手術で両脚に重い障がいが残り、ほとんど動かせなくなる。
高校生の頃に車椅子バスケットに出会い、伊丹市のチームに所属。2017年にクライミングを始め、同年初開催されたパラクライミング日本選手権車椅子部門で優勝。その後3年連続で日本一に輝き、2019年フランスで開催された世界選手権で銀メダルを獲得した。
現在は堺市立健康福祉プラザ市民交流センターで障がい者アート活動の支援を行う一方、「一般社団法人フォースタート」を設立し、車いすバスケットボールの体験会やセミナー講演会、車いすバスケットボールチームの運営を行っている。また、「ダイバーシティ戦隊ヤルンジャーズ」のメンバーとして、川西を拠点に当事者の声を届ける活動に取り組む。
インタビュー
2017~19年のパラクライミング日本選手権AL1部門で、3連覇を達成し、2019年7月フランス・ブリアンソンで開催されたパラクライミング世界選手権では銀メダルを獲得した大内秀之さん。大会での様子や現在の活動についてお話を聞きました。
念願の世界選手権に日本代表として出場
これまで選手数が少なくて成立しなかった世界選手権が、初めて開催された2019年。日本代表として出場できたのがうれしかったですね。世界中の選手と「いつか人数を増やして実現しよう」と誓い合っていたので、選手たちは敵やライバルではなく共に戦う仲間のように感じました。
2位という結果に涙をこらえきれなかった
絶対登り切ってやろうと挑んだ大会でした。会場の歓声をあおると、みんなの声が僕のところまで届いて力になりました。もう少しで届く、というところで落ちてしまって。日本選手団のもとに戻るのに悔しさと申し訳なさで顔を見せられなくて、ひっくひっくと泣いていました。これまで泣いたことなんてなかったのに。
でも、銀メダルという結果は応援してくれる皆さんからもらったご褒美だと感じています。
クライミングを始めて2カ月で挑んだ日本選手権
パラクライミングと出会ったのは仕事先である堺市立健康福祉プラザでした。障がいを持つ人が参加する体験会で、インストラクターに勧められたんです。手だけで登るのはなかなか大変で、踏ん張ることもできません。でも、練習を始めてすぐ日本選手権が初めて開催されることを知り、2カ月間必死で練習しました。結果、日本選手権で優勝することができました。その時に感じたのが、周りの人が喜んでくれることが自分の力になること。その結果が優勝だったんだと思います。
失敗の中に成長につながるヒントが必ずある
クライミングの好きなところは、1回1回成長があるところ。次のホールド(つかむところ)に届かないことがあっても、仲間にアドバイスをもらい、握り方を工夫する。すると、前よりも少し近づく。また握り方を変えると、もっと近づく。それを繰り返すことでホールドに届くようになるんです。失敗の中にヒントが隠れていることに気付かされますね。
クライミングで世界に挑む中で、たくさん応援をしてもらいました。それが自分の力になっていくのを感じたんです。だからこそ、挑戦し続けることが、誰かを応援することにつながればうれしいです。例えば、引きこもって家から出られない人がいれば、出てきて一緒に登ろうぜと伝えたい。自分にもできるかもと思ってもらうきっかけになればと。それが、社会課題の多い時代に生まれた自分の役割だと感じています。クライミングでも、そうでなくても、挑戦し続けます。
過去の自分に恥じない自分でい続けること
生まれた時、たまたま病気が見つかって治療してもらえたからこそ今この命があります。その時に頑張った自分に「頑張らなければよかった」と思われないようにしたいというのが原点。時々、足に激痛が走ることがあります。痛みに耐えられず、夜中に目がさめることも。だからこそ、痛くない時はポジティブでいよう、やりたいことをやろうと強く思いますね。
社会課題の多い時代に生まれた自分にできること
苦しい時があるからこそ、やりたいことを全力でやりたい。それが今の自分です。例えば、児童虐待や引きこもり、子どもの自殺など、今の社会にあふれている課題は、誰に聞いても良いものだとは思いませんよね。それでも、なくなりません。僕はそれを自分の実体験をもとに、問いかけていくことで変えられると信じています。小学校で車いすバスケットボールを教えることや、クライミングで世界で活躍する姿を見せること。故郷である川西市でも、自分にできることがあるならやっていきたいです。
障がい者の「者」の部分を見てほしい
市内の小学校で車いすバスケットボールを教える機会がありました。僕はギャグを言ったり技を見せたりするうちに、最初は「障がい者」として見ていた子どもたちが「大内さん」として見るようになるんです。素早く移動し、ゴールを決める僕がヒーローになるんです。そんな経験をすることで、日常生活の中で障がいを持つ人に距離を置くのではなく、ちょっと困っている時に声を掛けたり手助けができる人になっていけるのではないでしょうか。それが自然にできるまちづくりが進めば嬉しいですね。
企業に当事者の声を届ける新たな活動
2019年、新たな活動をスタートしました。「ヤルンジャーズ」は、企業の人事や経営に携わる人を対象に、誰もが働きやすい場所について伝える集団です。私以外に発達障がいの支援のプロや助産師など、いろんな分野で活躍するメンバーが所属しています。生活に欠かせない「働く」場所を、誰もが働きやすい場所にするため、当事者の声を発信。職場の当たり前や平均点という概念を無くしていく手助けができればと考えています。
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