広報かわにしmilife(みらいふ)2020年2月号特集 共助は災害の最前線(ホームページ版)

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ページ番号1009986  更新日 令和2年1月29日 印刷 

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25年前に突然まちを襲った阪神・淡路大震災
地域で助け合う「共助」によって多くの命が救われました
市内では公園や住む場所で備える活動が行われています
今号では、地域で支え地域で守る防災を特集します

ご近所の協力が支える防災力

清和台自主防災総合訓練に参加する市民

いつ起きてもおかしくない自然災害

自然豊かな住宅都市、川西市。清流猪名川が南北に流れ、山に囲まれた自然豊かなまちに、約16万人が生活しています。しかし、私たちの生活に恵みをもたらす自然は時として牙をむきます。それが自然災害です。
25年前の1月17日午前5時46分、阪神・淡路大震災が発生しました。強く突き上げるような揺れがまちを襲い、市内で3282棟が全・半倒壊。停電、断水、ガス漏れが市内各地で起こり、143カ所で道路損壊が発生しました。
ピーク時には、市内14カ所の避難所に2074人が避難。延べ2万3015人が避難所で過ごしました。
四半世紀が経ち、震災の爪痕はほとんど見られなくなりました。しかし、平成30年の台風21号では市内約1万3000世帯で停電が発生。大阪府北部地震では市内で最大震度5弱を観測し、交通機関が一時運行休止しました。異常気象による水害や30年以内に80%の確率で発生するといわれる南海トラフ地震など、いつ災害が起こってもおかしくない状況です。

防災に欠かせない3つの力自助・共助・公助

防災を考える時、大切なのが「自助」「共助」そして「公助」です。
自助は、自分の命を自分で守ること。自身で避難行動をとることや自宅での備蓄食糧の確保などがあります。共助は、地域で助け合って自分たちで守ること。近隣住民の避難支援や地域での炊き出しなどです。公助は、市や消防、警察、自衛隊などが守ること。救助隊員による救助活動や市の備蓄食糧の確保などを指します。
多くの命を守り、災害に強いまちとなるには、3つの力が欠かせません。

ご近所とのつながりが命をつなぐ

災害が起こると、自分一人では解決できないことや、市職員や消防隊員の助けを待たずに対応しなければならないことがあります。道路が破損して通れなくなったり、市内各地で救助が必要になったりすると、いつ救助隊が到着するか分かりません。
阪神・淡路大震災で、生き埋めになった人の約30%は、友人や隣人によって助け出されたと報告されています。
また、避難所での生活が始まると避難所は避難者自身で運営することが望ましく、スペースの使い方や物資の配分を決めることも重要です。
共助への取り組みが私たちの命と被災後の生活に大きく影響するのです。

自力で脱出34.9%、家族31.9%、友人・隣人28.1%、通行人2.6%、救助隊1.7%、その他0.9%
阪神・淡路大震災における生き埋めや閉じ込められた際の救助主体など
【出典】公益社団法人日本火災学会「1995年兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書」

自助:自分の命や財産を自分で守ること
食糧や水の備蓄/避難経路の確認/家具の転倒・落下防止

共助:自分たちの住む地域を自分たちで守ること
地域の防災訓練/近所同士の声掛け/高齢者などの支援

公助:市や県など公的機関による救助や支援
市民への情報伝達/避難所の確保/救助隊員の出動

災害発生時に必要な共助の一例

  • 住民同士の声掛け

近隣住民同士で安否を確認し、自宅が危険な場合は避難を促します

  • 避難困難者の支援

1人での避難が難しい高齢者や障がい者などの避難を手伝います

  • 被災者の救助

家屋などの下敷きになり動けない人を救助し、けが人に応急処置をします

  • 消火活動などへの参加

火災の拡大を防ぐための消火活動や、水害を防ぐための土のう設置に参加します

東日本大震災に学ぶ人知を超えた自然災害の脅威

市職員 石橋尭之
市職員 石橋尭之
宮城県牡鹿郡女川町に派遣され勤務

東日本大震災の発生から間もなく9年。女川町では、商店街や住宅街などでにぎわいを感じられるほどに復興が進んでいます。高台には新たなまちの基盤が作られ、新しい小学校やスーパーも建てられる予定です。
しかし、女川町職員から聞く当時の様子は、想像もできないことばかりです。
高さ20メートルの津波がまちを襲い、車や家がガラクタのように流されていくのをただ見ているしかなかったこと。津波が引いて大丈夫だろうと家に戻った人が2回目、3回目の津波で流されてしまったこと。身近な人が被害に遭ったという職員もいます。
私たち職員は、災害が起きると避難所の開設や現場状況の確認などを行います。しかし、人知を超えた自然災害が起きると、職員もなすすべがないのだと改めて感じさせられます。女川町での経験を生かし、川西市職員として今できる最大限の備えを考えていきたいです。

被災地への応援職員

市では、被災地へ応援職員を派遣しています。これまでに、東日本大震災の被災地には延べ24人を派遣。現在、女川町と南三陸町で2人の職員が復興支援に携わっています。

災害は日常の延長線上にある

市民が主体の防災イベントが動き出しています
避難場所のキセラ川西せせらぎ公園で防災設備の使い方を体験
いつも過ごす場所でできることを学び共有することで
災害に備える活動が広がっています

かまどベンチとマンホールトイレ

キセラカフェ
キセラカフェの様子

公園の防災設備市民が使えなきゃ意味がない

市の中心市街地にあるキセラ川西せせらぎ公園。同公園を語り合う場「キセラ・カフェ」で、防災の話題が挙がりました。
「防災設備があるっていうけど、本当にあるの」
同公園には、災害時にかまどとして使えるベンチや水道が止まっても使える組み立てトイレ、非常時用の貯水槽などが備えられています。しかし、普段は使い方を目にしたり、使ったりすることができません。
「公園の防災設備は、実際に被災したときに市民が使えないと意味がないよね」
普段公園を使う人がまず使えるようになろうと、「市民発キセラ川西せせらぎ公園みんなでつくる防災イベント」が企画されました。

特技を生かした持ち寄り企画で体験

防災イベントに共感したメンバーが話し合い、当日は公園防災設備の使い方を知るブースと、メンバーが持ち寄ったブースが出されることになりました。
川の水でも調理ができるパッククッキングや災害時に活用できるロープキーホルダー作り、AED講座など、メンバーの特技や経験を生かした企画が集まります。
また、国際交流協会が外国人の災害支援を考えるワークショップもキセラ川西プラザで実施。言葉や文化が違う者同士のコミュニケーションや避難行動を考えます。

誰もが主役 地域で取り組む活動

災害の現場では誰もが主役。生活しているいつもの場所で、自分がどう動くかを想像し、やってみることが災害時の行動につながります。
市内では、自主防災組織やコミュニティが中心となり、地域で防災活動に取り組んでいます。災害が起きた時、地域の中で起きることを想像し、自分に何ができるのか考えてみませんか。

防災力を支える地域の活動

市内全ての地域で結成「自主防災組織」
「自分たちの地域は自分たちで守る」という考えのもと、災害時に地域住民が互いに助け合い、被害を軽減するために結成している組織。おおむね小学校区ごとに結成され、防災訓練や防災啓発イベントなどに取り組んでいます。

住民手作りの訓練で防災の裾野を広げる

中村清秀さん
清和台地区自主防災会
会長 中村清秀さん

自主防災会では、毎年1月に自主防災総合訓練を清和台中央公園で行っています。年代を問わず参加してもらうため、とんど祭と子ども向けの昔遊びイベントを同時に開催。約1,500人が参加する恒例行事になっています。
訓練の手本を見せるのは自主防災会のメンバーと、小学4~6年生で作った子ども防災クラブのメンバー。堅苦しい説明ではなく、知っている者同士で教え合えるので、すっと受け入れてもらえている実感がありますね。年々質問が深い内容になってきているので、積み重ねの大切さを改めて感じています。
清和台は高台にある団地のため、水害の可能性が低い地域です。しかし訓練では、土のうを積む訓練も行います。災害はいつどこで発生するか分かりません。家の近くではなく、出掛けた先でも自分の命を守り近くにいる人を助けられるように、訓練が必要なんです。
災害が起きたら、誰もがパニックになり動けなくなってしまうはずです。訓練を地域みんなで繰り返すことで、知っている人や動ける人を増やし、防災の裾野を広げることが災害に強いまちには必要だと思います。
これまで続けてきた防災訓練も、今作成している自主防災マニュアルも、絵に描いた餅にしないように地域に浸透させていきたいですね。

被害を一人一人が予測危機感を地域で共有

水川元さん
川西小学校区コミュニティ推進協議会
安全安心防災マップづくりプロジェクトチーム
代表 水川元さん

近年、命に関わる経験したことのない大雨や台風の発生を受け、国や県では1,000年に1度を越える降雨を想定した洪水浸水想定区域図を発表しています。川西小学校区も猪名川や最明寺川、寺畑前川の影響を受けます。住民一人一人に周知し、命を守る行動につなげるため、川小校区防災マップの制作を進めてきました。
市の一括交付金を活用した「安全安心防災マップづくりプロジェクト」では、自分の家の場所ができる限り分かる点にこだわりました。猪名川などが氾濫した場合の目安として自宅は何メートルまで浸水する可能性があるのか、浸水のレベルをしっかり把握できるように記載しています。避難所の危険度を理解し、無理に避難せずに在宅避難と避難所の両方を想定して準備するなど、大雨の前に計画を立てるきっかけになればと構成しています。
マップ配布に合わせて、自治会ごとに説明会を開催予定です。災害が起きたとき、消防や警察などの助けを待っていたら助かる命も助かりません。「互近所」同士の安否確認や情報共有が不可欠。どこの誰に連絡するかを隣近所で共有し、助け合う関係づくりにつなげたいですね。
危機感のスイッチを押すのは周りの人、そして最後は自分自身です。危険(ハザード)を理解すれば、おのずと心構えが変わってくると思います。

避難所の心得こつこつ

段ボールトイレの作り方を学ぶ緑台小学校の4年生

地域で備えるために必要なのはまず知ること
市では防災の知識を持つ「かわにし防災士会」と協力し
子どもたちへの防災学習を実施しています
また、地域で活動するリーダー育成に向けて資格取得を支援
災害時に誰もが活躍する地域づくりが進んでいます

防災訓練と同日に学校で防災学習を初開催

毎年1月、市では防災訓練を行っています。今年、東久代運動公園に集まったのは消防職員や消防団員、自主防災組織で活動する人など約300人。震度6弱の地震が発生した倒壊家屋や土砂崩れ現場を想定し、救出・搬送訓練などを行いました。
同日、防災訓練と並行して小学校の授業で防災学習が行われました。これは、子どもの頃から防災の意識を持つきっかけをつくるため、今年初めて行われたものです。
緑台小学校の4年生37人が参加し、避難所で使う段ボールベッドと段ボールトイレの組み立て方を学びました

自分たちにできることを見つけてほしい

かわにし防災士会と緑台・陽明地区自主防災会のメンバー、災害時にこの地区の避難所を担当する市職員から作り方を聞きながら、子どもたちはテキパキと組み立てます。出来上がると、「床よりもあったかいね」「みんなで乗ってもつぶれないよ」と段ボールベッドに座って強度を確認します。
「避難所に来ることがあったら、みんなで組み立てを手伝ってね」と声を掛けるのは、かわにし防災士会の駒井澄子さん。防災士の資格を持ち、地域で防災の啓発などを行っています。駒井さんは子どもたちに語り掛けます。
「災害が起きた時には皆さんにできることをしてください。今日習った段ボールベッドを作ることだけではありません。例えば、自分より小さい子と遊んだり、勉強を教えたりすることができますよね。また、お年寄りや体が弱い人の話し相手になることもできます。避難所ではいろんな人が集まってきます。友達や家族と相談して、自分たちでできることを考えてみてください」

防災への取り組みを支援しています

出前講座を受け付け

サークルやコミュニティなど10人以上の団体を対象に、「出前講座」を受け付けています。市職員や防災士会のメンバーが、家庭での備蓄や災害時の避難行動などを紹介します。対象年齢などにより、内容は調整可能です。希望者は、市ホームページ掲載の申込書に必要事項を書き、市役所4階の危機管理課へ。

防災士の資格取得を支援

防災の知識と技能を持ち、地域のリーダーとして活躍する防災士の資格取得を支援しています。資格取得者を対象に、講座の受講費などの一部を助成。希望者は、「ひょうご防災リーダー講座」(県が実施)か「防災士養成研修講座」(日本防災士機構が認めた研修機関が実施)を申し込む前に危機管理課に連絡してください(条件あり)。

事業者・団体と連携 災害協定の締結

市では、災害時に備えて事業者や団体と連携協定を結んでいます。避難場所の提供や物資提供による避難所生活の支援など、災害時に市民の生活を維持するために協力します。

今年度締結した事業者と支援内容の一例(1月15日現在)

アンカー・ジャパン株式会社
ポータブル電源やモバイルバッテリーなどを優先供給

県行政書士会
被災者の多岐にわたる相談を一括して受け付ける窓口を設置

リ・レント有限会社
株式会社ユニオンアルファ

避難所運営などのため、保有している資機材を提供

市薬剤師会
医薬品などの供給や医療救護活動を行う薬剤師の派遣

株式会社ロイヤルホームセンター
株式会社阪急オアシス

物資の供給や応急対策活動時の施設利用

市と地域が支え合って育てる防災力

越田謙治郎
川西市長
越田謙治郎

防災は、安心安全なまちづくりに欠かせないものです。市民会議やタウンミーティングで市民の皆さんから多くのご意見をいただき、その重要性を改めて実感しています。
市では、地震や風水害などの災害を想定し、食糧・物資の備蓄や防災訓練の実施、事業者との連携などを行っています。来年度は防災マップの更新を予定しており、市民の皆さんへの適切な情報発信を計画しているところです。
しかし、大災害が起きたとき、市民の皆さんの命と安全な生活を守るには皆さん自身の力が必要です。隣にいる人に手を差し伸べ、ご近所同士で協力することが大きな防災力となります。
安心安全な生活を続けていくために何が必要か、私たちと一緒に考えていただければと思います。

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