子ども・オンブズコラム平成24年9月15日号
ページ番号1001727 更新日 平成30年3月8日 印刷
コラム「虫たちと共生する」
8月下旬、岩手県西和賀町(にしわがちょう)を訪れました。東北地方の地図を広げると、奥羽(おうう)山脈が連なる岩手県中西部、秋田県との県境に南北に広がる細長い町をみつけることができます。それが西和賀町です。
私が西和賀町を訪れたのは、「第10回全国・西和賀まるごと児童養護施設事業」に参加する子どもたちに会うためです。児童養護施設というのは、親が病気である、親から虐待を受けているなどの理由で親と一緒に暮らすことのできない子どもたちが生活しているところです。今年は10カ所の児童養護施設から16人の子どもたちがこの事業に参加しました。子どもたちは古民家に泊まり、4泊5日の日程で、自然探索やボランティア活動、川遊び、川下りなどの体験活動をおこないました。
子どもたちが宿泊した古民家は、町の教育委員会が管理する保存家屋で、地域の人から「清吉稲荷(せいきちいなり)」と呼ばれて親しまれています。清吉稲荷の周りは田畑が広がっているだけで民家はありません。街灯もなく、夜になると漆黒の暗闇に包まれ、満天の星空を眺めることができます。
清吉稲荷の中に足を踏み入れると、タイムスリップしたような不思議な感覚におそわれます。囲炉裏(いろり)のすすでまっくろになった高い天井、広い土間、太い大黒柱(だいこくばしら)。エアコンや網戸はありません。南に面した縁側の雨戸をすべて開け放すと、心地よい風と共に、蚊、アブ、ブト、蛾、名前も知らない虫がいっぱい入ってきます。夜、囲炉裏端に座ってお茶を飲んでいると、電球に集まった虫たちが電気の熱さに負けてコップの中に落ちてきます。
私は、蚊、アブ、ブトなど、自分が被害を受けるかもしれない虫は苦手です。それに蚊に刺されただけでも、いつまでも赤く腫れあがって痒みがとまりません。だから普段の私は、蚊がとんでいると、刺される前に退治しようと躍起になる方でした。とはいえ、日々の暮らしの中でアブやブトに出会うことはめったにないし、マンション住まいの6階の我が家には、蚊が入ってくることもほとんどありませんでした。
そのような私ですが、清吉稲荷にいると、たくさんの虫たちの中にいる蚊は、もはや退治する対象ではなくなりました。アブやブトも同じです。自分が被害を受けるかもしれない虫であっても、出会う頻度が高く、その数が多くなると、退治しきれるものではありません。そのため、虫を退治するのではなく、いかに虫から自分の身を守るのかと考えるようになりました。また、アブは人間にとまってから刺す場所を探すので、アブがとまってもあわてることなく、刺される前にアブを手で捕まえることができると知ったことでアブに対する恐怖心も軽減しました。
虫を退治して懲らしめるのではなく、虫の習性を知り、虫の攻撃から身をかわすことよって虫たちと共生できることを知ったように思います。
執筆:オンブズパーソン・井上寿美
視察を受けました
- 5月18日(金曜日) 埼玉県朝霞市議会 民生常任委員会
- 7月3日(火曜日) 青森市議会 文教経済常任委員会
- 8月10日(金曜日) 大阪府泉南市教育委員会
- 8月16日(木曜日) 開成高等学校(東京) 社会科研究部
- 8月17日(金曜日) 滋賀県議会 対話の会・しがねっと
- 8月21日(火曜日) 鳥取市議会 公明党議員団
- 9月7日(金曜日) 青森市健康福祉部子どもしあわせ課
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