子どもオンブズ・コラム令和3年12月号 解剖学の本から教えてもらった

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ページ番号1014686  更新日 令和4年1月14日 印刷 

解剖学の本から教えてもらった

中村相談員
中村相談員のイラスト

 最近「手」を題材に絵を描こうと自分の手をあらためて見る機会がありました。まずは自分の指がどういった形をしていて各指のバランスはどうなっているのかを目で確認しました。次に指を曲げたりして、どこに関節があってどういう形で曲がるのかをじっくり観察したり、もう一方の手で触って骨がどうなって指が動いているのかを確認しようとしました。でもどれだけ観察しても触ってみても、手の中のどこがどうなって指が動いているのかまではわかりませんでした。

 絵を描くヒントになればと思い観察し始めたものの、手の構造がどうなっているのかが気になりすぎて絵を描き出すことができず、手の仕組みが書いてありそうな本を探しに行くことに。人体の構造については生物の授業でなんとなく習ったことがあるかな、といった程度の知識しかない僕でも読めそうな内容で、なるべく絵や図などの視覚情報の多い本を求めて本屋をウロウロし『好きになる解剖学part3』(著:竹内修二)という本を見つけました。part1もpart2を通り越していきなりpart3を手に取ったのですが、part3になるほど内容も書き方も初心者に分かりやすく、カラーの挿絵があったり写真が載っていたりと、まさに「好きになる」工夫がされていたのです。著者の竹内さんの見事な工夫に購買意欲を掻き立てられ、購入することになりました。

 本では最初に「肘」の開設から始まるのですが、そこでは「わき(脇)の下はくぼんでいます。この場所を腋窩(えきか)と言います。」から始まり「ひじを軽く曲げると、ひじの前にくぼみができます。このくぼみにも『窩』を使い、ひじ(肘)のくぼみ(窩)で肘窩(ちゅうか)と言います。」続けられています。竹内さんはサラッと解説をしてくれるのですが、僕はというと、「腋窩」「肘窩」という言葉も初めて目にしましたし、脇や肘をくぼんでいる身体の部位として見たことがなかったので「脇とか肘ってくぼんでるって言うんや」と思いましたし、その表現の仕方と表現の背景にある身体へのまなざし方や理解の仕方に驚きました。

 このように、聞いたことのない言葉や表現もたくさん出てくるのですが、今まで目で見てはいた(視界には入っていた)けど理解していなかったものもこの本では解説されています。僕の当初の目的であった「手」のページでは、僕が手相として見てきた手のひらの皺の役割が紹介されていたので少し長くなりますが引用します。

 手のひらには、人差し指と中指の間あたりから手のひら小指側に向けて伸びた「感情線」、人差し指のつけねあたりから感情線の下を並行して伸びた「知能線」、人差し指と親指の間から手首の方に向けて伸びた「生命線」があります。突然ですが、すべての指を伸ばして、小指からはじめて薬指、中指ぐらいまでで手のひらをくぼめてみてください。すると、感情線が深い溝になります。逆に、今度は人差し指から始めてみると「知能線」が人差し指側から深い溝になります。次に、1つ2つと数える時のように親指を手のひら側に折ってみると「生命線」がはっきりとした溝になります。手相で使われる手のひらの線は、手の指を曲げる際に手のひらの皮膚を折れやすくするための折り目だったのです。

『好きになる解剖学part3』p.8-9.

 また、指の動き等については、手の内部の骨や筋肉、腱の配置図が示されながら解説されていました。たとえば、親指以外の4本のうち、中指と薬指は両側(中指は人差し指と薬指と、薬指は中指と小指と)が腱で繋がっていますが、人差し指と小指は片側(人差し指は中指と、小指は薬指と)しか腱で繋がっていません。片側でしか腱で繋がっていないことで比較的自由に動かすことができ、手で影絵のキツネの形をつくった時には人差し指と小指で耳を表現することが可能になるのだそうです。といったように、新しい発見ばかりでとても面白い本なのですが、読むほどにこんなにも近くにある自分の身体についてほとんど知らなかったことに少しショックを受けつつ、それを越えて好奇心が掻き立てられています。

 よく考えれば、自分の全身を写真や鏡に映る姿で見ることはできますが、自分が他者の全身を見る時のように、肉眼で自分の全身を見ることはできません。また、録音した自分の声に自分が一番違和感をもつように、僕は自分の声を耳と骨伝導で聴いてしまうため、自分が他者の声を聴く時のようには自分の声を聴くことはできません。自分の身体を触ってみても、触れる両側に皮膚感覚があるため、自分が他者に触れる時のようには自分の身体に触れることはできません。自分のことは自分が一番よく分かっている、と思っていたのですが、自分について知っていることは案外少ないのかもしれません。自分で自分を見たり理解したりするのが難しいからこそ、自分で自分を決めつけ過ぎないようにして日々を過ごしたいなと思いました。本を読むばかりで、目的だったはずの絵は進んでいませんが、描き始める時にはこれまで以上に「手」のこと、そして「自分」のことも知って描きたいなと思っています。

執筆:相談員 中村 誠吾(せいくん)

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