子ども・オンブズコラム平成26年9月号 私は「おとな」になれるのか?(渡邊相談員)

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ページ番号1001706  更新日 平成30年3月8日 印刷 

私は「おとな」になれるのか?

渡邊相談員の似顔絵
 似顔絵:渡邊相談員

 タイトルを見て、「今、同じこと考えてた」という人も、いるかもしれない。「かつての自分はそうだった、悩んでたなぁあの頃…」と、若かりし日々を思い出す人も、いるかもしれない。
かく言う私は、法律上「おとな」として認められるようになってから、気がつけば10年以上の時を過ごしてきたことになる。でも、自分自身のありようとして、いつの時点で「子ども」から「おとな」になったのかと考えてみると、その境界線はとてもあいまいだ。そもそも私は「おとな」になっているのか? 中学生ぐらいからたいして進歩ないんじゃないか…? などと思うことも、あったりして。
 ただ、一つだけはっきり感じることがある。子どもの頃に抱いていた「おとな」のイメージと、実際に「おとな」として日々を過ごしている今の私の暮らしは、ぜんぜん違っていたということだ。ありがたいことに、それはいい意味で違っていた。もちろんしんどいことも悩みごともあるし、嫌でもやらなきゃいけないことだってある。でも、子どもの頃より今の方が、遊びまくっているような気もするし、何かやろうとなれば一緒に苦楽をわかちあえる仲間もたくさんいる。自分にとってのやりがいを感じられる仕事にも就くことができて、ご飯は食べていけている。「おとな」の暮らしも悪くない、むしろ捨てたもんじゃない、というのが実感だ。
 でも、私の今の暮らしは、たまたまの出来事の積み重ねの上にかろうじて成り立っているものだ。これまでの道のりを振り返るたびにそう思う。あの時、あの人に出会わなかったら…。あの日、あの場にいなければ…。あの時、こちらを選ばなければ…。どれか一つのピースが欠けていても、きっと、今の私は存在しなかった。
 子どもの頃、「私は『おとな』になれるのか?」と、不安だった。自分が「おとな」になるイメージがまったく湧いてこなかった。より正確に言うと、「おとな」になるということに対して、プラスのイメージを持てなかったのだと思う。私は何をして生きていくのか? いや、そもそも生きていけるのか? 差し出された未来に、自分の居場所を見つけられるのか、その手ごたえは、あまりに不確かに思えた。
 この種の悩みは、思春期にさしかかれば、誰もが抱くものなのかもしれない。そして、むしろ悩むことができただけでも、恵まれた環境にいたということなのかもしれない。今日、明日をどうやって生き延びるかというような、文字通り「その日暮らし」の厳しい境遇に置かれていたら、自分の将来について思いをめぐらせること自体、難しいだろうから。それでも、「おとな」になることをめぐる先の見えなさは、その渦中にいる本人にとっては、時に命にかかわるほどの切実さをもって迫ってくる。
 私の場合は、大学に入ってからの人間関係の広がりが転機になったと思う。エピソードを挙げればきりがないけれど、要は、こんなかっこいい/おもしろい/変な「おとな」がいるんだ! こんな「おとな」になってみたい! とあこがれてしまうような、「人生の達人」あるいは「求道者」と、(本当にたまたま)身近に出会う機会に恵まれたということだ。だから大学に行くのがいいことだ…なんて話をしたいわけじゃない。勉強が苦手でも、経済的に苦しくても、学校になじめなくても、家族関係がややこしくても、とにかくどんな境遇にある子どもにとっても、こんな「おとな」もいるし、あんな「おとな」もいる、それにみんな何だかんだで生きがいを持ちながら楽しく生きている、そんな多様な「おとな」との出会いが保障される世の中であってほしいと思うのだ。家庭と学校の人間関係で完結してしまうような暮らしのありようが、子どもたちの将来展望を、より息苦しいものにしてしまっているという面も、あるのではないだろうか。
 この世に生をうけたすべての子どもが、こんな「おとな」になりたい! と思えるモデルと出会うことができ、世界は生きるに値すると実感できる社会をつくること。そして、そんな社会になってほしいと願うだけではなく、自分にできることから行動に移すこと。それが「おとな」になるということなんじゃないかと、今の私は考えている。

執筆:チーフ相談員・渡邊充佳(みっちー)
 


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