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平成22年9月15日号

更新日 平成25年7月4日ID番号 K9352印刷

コラム「街の職人たち」

  駅近くの怪しい小さな古びたビルの2階に、その人はいつもひとりで居る。私より10歳以上年下の、整体の先生だ。彼女に施術してもらっている間、気持ち良過ぎて眠っているとき以外は、お喋りに花が咲く。お互いに、最近出くわした面白かったことや、よく分からなかったこと、本や映画のことなどを話す。すべての話題に、いつもストレートで絶妙な返しが来て、爆笑したり、なるほどと納得したり、身体だけではなく、気持ちがゆる~く健やかにされてしまう。しかし、本人にその凄さの自覚はない。 
   腕も凄い。この間、本を出されたが、多くの文献から学び、経験に裏打ちされたその施術は、無駄がなく美しい。いかにしたら、関わっている人の身体が楽になるかを、時折、夜も寝ずに考えている。そして、それが何より楽しくてたまらないという。生粋の職人なのだ。ちなみに、彼女のお兄さんは、ギターづくりの職人で、プロのギタリストでもあり、いつもそのCDが流れている。…落ち着く。 
   駅からもう少し行くと、これまた古びた時計屋さんがある。宮崎アニメに出てきそうな、入るのにちょっと勇気がいる佇まい。この夏、意を決して、壊れた目覚まし時計を持って、その店の扉を開けた。 
   誰もいない店内には、古い大きな柱時計がなんと20以上は並んでかかっている。ウィンドウの中の腕時計は、私が見ても分かるくらい年代物ばかりだ。机の上には、修理中の置時計の細かい部品の上に、ガラスの蓋がかぶせられている。その様子が、とても美しい。 
   「ごめんください」と何度か声をかけて、奥から出ていらしたおじさんは、小さな眼鏡を鼻にかけて、眼鏡の上から覗いた目はちょっと怖そうだった。おそるおそる持ってきた置時計を差し出すと、「電池式の時計は使い捨てだからね。本当の時計はネジ巻き式なんだよ」と、きっと何度も店に来た人に教えてきただろう言葉をおっしゃる。私は、まったくそのとおりと、もってきた時計をちょっとだけ恥ずかしく思った。(でも、それは、私の好きなトトロの時計だから、電池式だけれど捨てられないものでもあった。)あっという間に修理して、お代も取らずにおじさんは、表情も変えずに時計を返した。なんだか…良かった。 
   この話を家族にした後、お盆に、誰も住んでいない田舎の家に戻ったとき、たぶん昭和の初期生まれだろう、ホコリに埋もれた柱時計を息子が見つけた。ネジを差し込んで回したら、カチコチと動く。いっしょにあの時計屋職人のおじさんのところに行き、分解掃除をしてもらおうということになっている。 
   愛想がいいわけじゃない。むしろ、悪い。ただ、自分の仕事が心底好きで、利益にかかわらず、その仕事に入れ込んでいる人々が、日本全国に、世界あちこちに居る。 
   これから仕事を探す子どものみなさん。街の職人は、ほんに凄くて美しい。圧倒的な存在感がある。ぜひ、あなたの街の職人さんたちと、おそるおそる出会ってみてほしい。                                                                                                        (オンブズパーソン 桜井 智恵子)


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