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〔子どもオンブズ・コラム平成27年12月号〕 「そのままが、おもしろい」

更新日 平成29年11月17日ID番号 K19238印刷

そのままが、おもしろい

船越相談員の似顔絵
   似顔絵:船越相談員

 以前にもこのコラムでお話ししましたが、わたしには好きなものがたくさんあります。ベンチからイヤリングまで(決してうまくはないけど)いろんなものを作ること、庭いじり(肥料などを混ぜ合わせて、うまい具合にふかふかの土をつくれた時はたまりません)、洋服の毛玉とりや靴みがきなんかの地道な作業、などなど。いつから好きなんだっけ?と思い返すと、小学生のころから好きなものがほとんど変わっていないことに気がつきました。けれどもひとに堂々と「これが好き」と言えるようになったのは……たぶん、高校2年生ぐらいから。それまでは、好きなものはなに?なんて話題になると、なんだか喉がつまるように感じて、結局あいまいに笑ってみんなと同じようなものを答えていました。引っ込み思案な性格もあったけれど、奥のほうには小さく、ぼんやりと、怖い、という思いがずっとありました。
 どうして怖いのかなんてつきつめて考えることもなく、当時はよく分からないまま。そのうちあんまり怖さを感じなくなっていき、そんな思いも記憶の底のほうに沈んでしまいました。けれどずっとあとになってから、あるお話を読んで、そうそう、こんな感じだった!と当時のことを思い出したのです。今回のコラムでは、そのお話について紹介したいと思います。それは「Papa told me」(著:榛野なな恵)という漫画のなかのお話です。

 主人公の知世(ちせ)ちゃんは小学生。かしこくて、自分の意見ははっきり言う、おとなっぽい女の子。早くにお母さんを亡くし、作家のお父さんとふたりで暮らしていて、お父さんのことが大好きです。
 ある日、ひょんなことから知世ちゃんは、はとこ(親のいとこの子ども)の強(つよし)くんと出会います。内向的でおとなしいけれど、実は芯の強い一面も持つ強くんは、どこか知世ちゃんと似ていて、ふたりはすぐに仲よくなります。知世ちゃんの部屋に案内された強くんが見たのは、たくさんのぬいぐるみ。「みんな私のちっちゃい頃からの大切な友達」という知世ちゃんに、強くんはどこかさびしそうに笑います。実は強くんにも同じように大切なクマのぬいぐるみ、クマゴローがいたのですが、ある事情でいなくなってしまったのでした。
 それは知世ちゃんと出会う前のこと。ある朝、強くんの部屋でクマゴローを見つけたお母さんは「どうしていつまでもこんなもの持ってるの? 男のコなのに恥ずかしいでしょ?」と言いました。強くんはそれでも、見えないところにしまっておくからと、クマゴローを捨てたくない気持ちを伝えます。しかしその日学校から帰ると、クマゴローがいなくなっていました。必死で探しても見つからず、とうとうお母さんにクマゴローはどこ?と尋ねます。するとお母さんはこともなげに答えたのでした。「捨てたわよ」と。
 この話を聞いた知世ちゃんは大激怒。強くんの気もちに共感して、涙をぽろぽろこぼします。そして、捨てられてしまったクマゴローはきっと誰かにひろわれて、今ごろはすてきな家でのんびり暮らしているよ、と強くんをなぐさめてあげるのです。はじめてこんなに気もちをわかってくれるひとに会った強くんは、ずっと抱えてきた、誰にも言わなかった気もちをぽつぽつと話しだしました。
 「クマゴローがいなくなった時 僕の世界のはしの方がくだけたみたいな気がした」「かけらをくっつけてももう元通りにはならないんだ 僕 気がついたから」「お母さんが本当に捨てたかったのはクマゴローじゃなくて「クマゴローが大好きな僕」なんだってことを」。

 お母さんもきっと、強くんを傷つけようとしたのではなかったはずです。お母さんはお母さんなりの価値観のなかに生きていて、強くんはクマゴローがいないほうがしあわせになれると思ったのかもしれない。でも、強くんにとっては、ちがったのです。
 好きなものは、自分の大事な一部。自分にとって大切なひとに、その一部を「いらない」と言われるのは、とてもつらい。そんなのはおかしい、と言えたらいいけれど、もしそれをわかってもらえなかったらどうしよう。もっと傷つくだけなんじゃないか。それならいっそ、忘れてしまったほうが傷つかなくてすむ。その気もちは、すごくよくわかります。

 強くんも、悲しい気もちはあるけれど、きっとそれをお母さんにはわかってもらえないこともわかっていました。少しずつクマゴローのことも、クマゴローを好きだった自分のことも、忘れよう……と思っていた強くんですが、知世ちゃんという理解者に出会ったことで、それじゃダメかもしれない、と思うようになります。「だって僕は 僕だもの」「父さんや母さんのきらいな僕も それは全部僕だもんね」。
 強くんの話を聞いた知世ちゃんは、そうよ、とおおきく頷きます。「好きなものは好き きらいなものはきらいって言うべきよ それは勇気がいるけど自分で決めることよ」「私は「クマゴローが大好きな君」が好きだわ」。

 思えば、わたしが高校2年生から変わったのも、クラス替えでできた友だちのおかげでした。その子は好きなものにはとことん詳しくて(ジブリ映画ならどんな場面でも一言一句再現してくれるなど、ちょっとマニアックなところもあったりして)、それがすごくおもしろくて、そしてまたわたしのちょっとヘンなところも「おもしろい」と笑ってくれました。その友だちがそんなふうにわたしのことを受けとめてくれたから、わたしもだんだん、好きなもの、自分の一部をひとに見せることを怖いと思わなくなったのかもしれません。
 知世ちゃんのようにまっすぐ、正面から伝えるのはなかなか照れくさい。だけど、おもしろいね、いいね、というちいさな「そのままのあなたが好き」の言葉は、きっととても力になる。すこしずつでも、そうやって、みんなに伝えていきたい。そんなふうに思っています。

執筆:相談員・船越愛絵(まなてぃ)
 


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